お勉強しかできない“秀才バカ”なのにエリートと勘違い…高橋洋一が的外れな主張に呆れた年収の「壁」問題 『財務省 バカの「壁」』試し読み

試し読み

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高橋洋一

2024年10月の衆議院選挙以来、年収の「壁」という言葉が、メディアを賑わせてきました。そして、続く国会で年収103万円の「壁」が160万円まで引き上げられたのは、ご存じのとおりです。でも、その本当の意味を知っている人は、果たしてどれくらいいるのでしょうか。

税金や社会保険料などに関連する政策は、なかなか理解しづらいと思いますが、それこそが私たちの生活に直結しています。そこで、元財務官僚の高橋洋一氏が、参議院選も近づいてきたいま、何も知らないままでいるとマズい真の経済・政治問題の根源、そして解決策に切り込んだのが最新刊の『財務省 バカの「壁」 最強の“増税マシーン”の闇を暴く』です。

今回は試し読みとして同書の「はじめに」を公開します。

***

 私の本やユーチューブ、テレビ出演などを見聞きしている方なら、おわかりだと思うが、これを機に私のことを初めて知る方もいるかもしれないので、最初にひとつ大事なことをお伝えしておきたい。
それは、私は元来、本書のタイトルにある「バカ」のような乱暴な言葉を平気で使うような人間ではないということだ。
自分で言うのも何だが、それなりに思慮深く、かつ激高することもまずない、きわめて穏やかな性格だと思っている。争いごとなどまっぴらごめんなので、面と向かって他人に「バーカ」などと言ったこともない。
ではなぜ、そんな私が、本のタイトルという大事な“看板”に「バカ」という言葉を使ったのか。
正直に言うと、編集者の口車に乗せられたというのが真実だ。しかし、本書の内容の責任は私にあるので若干言い訳すれば、いわゆる「壁」問題が取りざたされるようになって以来、財務省を中心とする霞が関、自民党を中心とする永田町、新聞・テレビを中心とするマスコミが、三者三様に繰り出す的外れ、調子っぱずれな主張について、「バカ」という言葉以外で表現のしようがなかったからである。
詳しくは本文に譲るが、「103万円」にせよ「160万円」にせよ、「壁」となって国民が豊かになるのを妨げているのは、実は金額の大小ではない。その数字の裏にこそ、本当の「壁」が存在するのだ。さらに、そのように「壁」の定義を絶妙にズラし、変えることによって得する最高権力の“闇”が確実に存在するのである。
では本当の「壁」とは何なのか。それが私が定義した、財務省=霞が関、自民党=永田町、そして新聞・テレビ=マスコミが、国民から真実を隠すために建てた「壁」=バカの「壁」である。これが今の日本を蝕(むしば)む真の問題なのだ。

私が大蔵省に入省したのは、今から45年前、すなわちほぼ半世紀前の1980年のこと。以来、ずっと間近で、“闇”の奥から壊れたマシーンのように「増税」を繰り返し指令し、“省益”のためなら国民を犠牲にすることも厭(いと)わない財務官僚、彼らの意のまま「インナー」だけで政策を進めてきた政治家、そして、その“ポチ”と化した記者たちの姿を見てきた。
彼らこそが、バカの「壁」のなかの住人たちだ。お勉強しかできない“秀才バカ”にもかかわらず、自分たちをエリートだと勘違いしている彼らは、「財務省解体デモ」を見るまでもなく、今やその壁が自分たちに倒れかかろうとしていることすら知らない。

俗に「バカにつける薬はない」といわれる。だが、本書に登場する「壁」のなかのバカな面々によく効く薬が、実はひとつだけある。それは、財務省の「増税バカ理論」の片棒を担いでいるバカ政治家に、選挙のたびに制裁を下すことだ。
本文で詳しく説明するように、財務官僚の強さは、政治家の力をはるかに凌駕(りょうが)している。それでも制度上は、財務大臣をはじめとする政治家の下に仕える立場だ。
だからこそ、政治家にしっかりと「バカにつける薬」を塗りたくり、「国民の暮らしを考えず、財務省のほうばかり見ていると大変なことになりますよ」と、親切に教えてあげるのだ。
そうすれば、バカの「壁」は間違いなく崩壊する。
壁が壁である限り、それは必ず乗り越えられるし、打ち倒せるのだ。
私はもとより、国民民主党の玉木雄一郎代表、あるいはガンとの闘いの末に亡くなった経済アナリストの森永卓郎さんなどが、財務省の攻撃に負けず、ときに、それを巧みにかいくぐりながら、人々にとって本当に必要かつ大事な“闇の真実”を発信し続けた。
そうした、これからの時代に絶対に必要な大事な知見、かつ最新情報を、本書にできる限り詰め込んだつもりだ。
あとは、それらを読者の皆さんが有効活用してくれれば、これ以上の喜びはない。

気づいたら、「はじめに」だけで「バカ」を13連発してしまった。これ以上書くと私の品位が疑われかねないので、ここらで打ち止めとしておく。

以上は本編の一部です。詳細・続きは書籍にて

高橋洋一
株式会社政策工房会長、嘉悦大学教授。1955年、東京都生まれ。東京大学理学部数学科・経済学部経済学科卒業。博士(政策研究)。80年、大蔵省(現・財務省)入省。大蔵省理財局資金企画室長、プリンストン大学客員研究員、内閣府参事官(経済財政諮問会議特命室)、内閣参事官(首相官邸)などを歴任。小泉内閣・第1次安倍内閣ではブレーンとして活躍。2008年に『さらば財務省!』(講談社)で第17回山本七平賞を受賞。『髙橋洋一のファクトチェック2025年版』(ワック)、『明解!金融講義 世界インフレ時代のお金の常識・非常識』(ソシム)、『財務省亡国論』(あさ出版)ほか著書多数。

高橋洋一(経済学者)

祥伝社
2025年6月11日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

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