リスボン、カイロ、台湾、バンコク。銀シャリ・鰻が海外一人旅で遭遇した忘れられない光景とは

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アメリカ・ヒューストンにて。「地球人(アースヒューマン)」を目指している鰻さんのTシャツは「地球」。 写真:鰻さんのインスタグラム@unaginigaoeより

M-1グランプリのチャンピオンで、今年は第60回上方漫才大賞も受賞したお笑いコンビ・銀シャリ。そのボケ担当・鰻和弘さんの趣味は、海外一人旅だ。

旅の目的は「アースヒューマン」になること。これは鰻さんの造語で、色々な国の文化、感覚、仕草などを吸収した人間、つまり地球全体の感覚を持った人間のことだ。

こうした感覚を身につけることを目指して旅を続ける鰻さんは、ヨーロッパ、アフリカ、アジアなど様々な国で出会った光景や人々を通じて、日本の面白さにも改めて気が付いたという。

一人旅だからこその醍醐味、訪れた国での意外な発見、自分自身の変化などを特別エッセイとして鰻さんに綴ってもらった。

(前後編の後編)

(前編)【6年前から海外一人旅をはじめた銀シャリ・鰻、目的は「アースヒューマンになること」。その真意とは】では、そのユニークな旅の方法や、フランス、ドイツなどでの忘れられない出来事を語ります。

「THE日本人の顔」って?

 旅のモットーではないが、各国で最低一人はその国在住の方と会って話を聞くことにしている。その国のルール、国民性などをざっくばらんに聞いてみると、色々なことが分かって面白い。個人的に特に楽しみにしているのが、フランスなら「THEフランス人の顔ってどんなんですか?」と在住の方に尋ねることだ。一緒に街を歩くなかで、見つけたら教えて下さいと頼む。男女共にだ。
 逆に外国から来た人に、「THE日本人の顔ってどんなんですか?」と聞かれたら、僕はすぐに見つけられる自信がある。街行く人を眺めて「あの人がそうですかね~」という感じで。
 フランスで教えてもらった「THEフランス人の顔」は、鼻が高くて明るい髪色、瞳はブラウン、眉と目の間が狭い。教えてくれる人の主観ももちろん入るけど、実際に見て自分のなかに何かしらの基準ができるのが嬉しい。

リスボンの忘れられないおじさん


リスボンの路面電車。坂の多いリスボンでは多くの人が気軽に利用している 写真:鰻さんのインスタグラム@unaginigaoeより

 まだ10ヶ国ぐらいしか回っていないが、世界には本当にさまざまな人がいる。
 ポルトガルの首都リスボン。リスボンの街は路面電車が走っている。現地でお会いした方に乗り方を教えてもらい一人で乗ってみた。最終の駅で降りて線路沿いにまた引き返していたら、向かい側から路面電車が来る。なんとなくの違和感。初めての二度見。運転手がとてつもなく大きかった。何かの錯覚かなと確認のために走って追いかける。ちょうど電車が停車したので、運転席が見えるところまで回り込む。衝撃。二人分ある運転席のスペースが一人でギチギチだった。顔を見てなお驚く。本来の顔の輪郭の外にもう一つ輪郭がある。二重アゴならぬ、顔全体が二重だった。しばらく呆然とする。あとで教えてもらったところによると、ポルトガルでも噂になっている名物の人らしい。


路面電車の名物運転手さん。輪郭が二つあって本当に驚いた イラスト:鰻和弘

 ポルトガルはヨーロッパの端っこで、海に面している。リスボンは自然も豊かで、丘や谷が点在する起伏に富んだ地形。そこに建物がギッチリ建っている。丘の上から見える海と街並は最高だった。
 帰国前、リスボンの空港でタックスフリーの手続きができるところを探していた。空港職員らしき男性に尋ねる。2メートルぐらい身長があるイケメンだ。
 僕のつたない英語でも伝わったのか、「案内してあげるから俺についてこい」のジェスチャー。優しい。安心する。だが、ついて行くと歩くのがめちゃくちゃ遅い。ありえないくらい遅かった。案内されているのに、何度かその人を追い抜いたくらいだ。身長2メートルで足も長く、歩幅はあるのに物凄くスロー。速く走るより、あの遅さで歩く方が難しい。僕が追い抜いてもまったくペースを上げることはなかった。長身のイケメンはずっと前しか見ていなかったのだ。

鰻和弘(銀シャリ)/うなぎ・かずひろ
1983年生まれ。大阪府出身。2005年に橋本直とお笑いコンビ「銀シャリ」を結成し、2016年に「M-1グランプリ」で優勝。テレビやラジオ、劇場を中心に活躍し、幅広い世代から人気を得ている。2014年には特技のイラストを生かした著作『どう使うねん』を刊行した。

新潮社 波
2025年10月号 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

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