ノンスタ石田「M-1グランプリを変えたのは『THE MANZAI』」初期の“漫才重視”からの変化を語る

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NON STYLEの石田明さん

M-1グランプリは、その名の通り「漫才日本一決定戦」である。2001年の初代王者は中川家、翌年はますだおかだ、翌々年はフットボールアワーと、王道の漫才コンビが栄冠を手にしてきた。

しかし、ある時を境にその様相が様変わりした――。そう語るのは、2008年のM-1王者で前回2024年大会の決勝審査員を務めたNON STYLE(ノンスタ)の石田明さんだ。

何が“漫才グランプリ”だったM-1を変えたのか? 石田さんが鋭い「漫才論」を語り尽くした書籍『答え合わせ』(マガジンハウス)より、抜粋してお伝えしよう。

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「THE MANZAI」がM-1を変えた

M-1は2010年でいったん終了し、2015年に再開しました。

2010年までのM-1は、いうなれば、全出場者がグー・チョキ・パーで勝負する「じゃんけん大会」。どのコンビも、漫才の基本構造にのっとったネタで点数を競っていました。

9年連続で決勝に進出した漫才界のモンスター・笑い飯の漫才も、ボケとツッコミが入れ替わるという形をとっているだけで、「偶然の立ち話」「ボケとツッコミの掛け合い」という漫才の基本構造は守られています。2010年に決勝進出し、独特な間の取り方で驚かれたスリムクラブですら、見せ方が変わっているだけで、漫才の基本構造には忠実でした。

唯一、第2回のM-1では、テツandトモがギターを引っ提げて決勝の舞台に立ちましたが、審査員の(立川)談志師匠は「お前らはここに出てくる奴じゃないよ」と2人に厳しくも優しい言葉をかけていました。

ところが、5年のブランクを経て再開された2015年以降、かなり様相が変わってきました。

M-1は、グー・チョキ・パーだけでなく、「ガー」とか「チェキ」とか「ペー」とか、今まで見たこともないような手法を見せるコンビが出てきて“超多様”な大会になりました。

いったいその間に何があったのか。そこで見過ごせないのが、2011~2014年に開催された「THE MANZAI」の影響です。

「THE MANZAI」は優勝者を決めるコンテストでありながらも、かつてのM-1のようなヒリヒリした緊張感はない、バラエティショーの側面が強い賞レースでした。これこそ漫才の伝統からの脱却と進化を引き起こした、象徴的な番組やと思います。

それは「THE MANZAI」が、「ウケやすさ」「笑いやすさ」に特化した大会だったからでしょう。

M-1は競技的な側面が強くて、お客さんも緊張した状態で見ています。素直に「面白いものを見て笑いたい」というよりは、「誰が一番面白いかが決まる瞬間を見届けよう」という意識が強いのかもしれません。

特に2010年までのM-1は審査員の点数もかなり厳しくて、今映像で見返しても、胃が痛くなりそうなくらいピリピリしているのが伝わってきます。

そこが「THE MANZAI」は大きく違いました。M-1でひどくスベって苦い思いをした漫才師はたくさんいますが、「THE MANZAI」でそんな思いをした漫才師は、たぶんいません。僕らも2012年と2013年に出場したときは、めちゃくちゃやりやすかった。M-1とはまったく空気が違うと肌で感じたし、実際、ウケました。

それだけ「ウケやすい環境」やったんです。「THE MANZAI」のプロデューサーから実際に聞いた話ですが、これは偶然の産物ではなく、制作側の意図として、そういう「誰もが笑いやすい空間」を作っていたそうです。

石田明(いしだ・あきら)
お笑いコンビ「NON STYLE」のボケ、ネタ作り担当。1980年2月20日生まれ。大阪府大阪市出身。中学時代に出会った井上裕介と2000年5月にコンビ結成。神戸・三宮でのストリート漫才で人気を博し、baseよしもとのオーディションに合格してプロデビュー。2006年「第35回上方お笑い大賞」最優秀新人賞受賞、「第21回NHK新人演芸大賞」演芸部門大賞受賞、2007年、NHK「爆笑オンエアバトル」9 代目チャンピオン、2008年「M-1グランプリ2008」優勝など、数々のタイトルを獲得。2012年、2013年、2年連続で「THE MANZAI」決勝進出。「M-1グランプリ2015」「M-1グランプリ2024」では決勝の審査員を務めた。2021年から、NSC(吉本総合芸能学院)の講師を務め、年間1200人以上に授業を行っている。ゲストの芸人とともにお酒を飲みながら漫才論や芸人論などを語るYouTubeチャンネル「NON STYLE石田明のよい~んチャンネル」も人気。

マガジンハウス 書籍編集部
2025年12月12日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

マガジンハウス

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『パンダのanan』(小泉今日子)、『美女入門』(林真理子)、『世界がもし100人の村だったら』(池田香代子)、『漫画 君たちはどう生きるか』( 吉野源三郎 原作 羽賀翔一 漫画)など、数々のベストセラーを刊行してきました。小説・エッセイから料理本、実用書、写真集まで、ジャンルは多岐にわたります。2008年には文庫を、2022年には新書を創刊。今、熱いのは学習まんがです。今、読みたいもの、時代が必要とする書籍をお届けします。