「同じ味だと思ってた…」人気ラーメン店が毎週やってる“アップデート”がすごすぎる

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その一杯の味、前回食べたときと「同じ」ですか?

 日本と海外を含め100店舗以上を展開するラーメン店があります。

 2004年、新宿ゴールデン街のわずか4坪・8席からスタートした「ラーメン凪」です。

 順調な滑り出しから一転、日を追うごとに来客が減り、一時は店内が“ガラガラ”という厳しい状況も経験した凪。そんな店が、どのようにして行列のできる人気店へと成長していったのでしょうか?

 小さな店から国内、そして世界へと羽ばたいたラーメン店の創業者が、悩み続け、考え抜き、そしてこだわりを持って進化してきた過程を綴った『すごい!ラーメン凪の仕組みと人づくり』から、創業当時の失敗とラーメンの味へのこだわりをお届けします。

同じ味を提供し続けて、ブランドをつくる

飲食店が事業として成立するためには、お客様に繰り返し、繰り返しご利用いただく必要があります。そしてリピートしていただくための条件は、

「また、食べたい」

と、お客様に思い出していただけるものをつくることです。

ここまでは誰もが納得するでしょう。

では、そのために、お店が心がけることは、次の2つのうちのどちらでしょうか。

【A】明日は今日より美味しいものをつくる
【B】今日の美味しさを、明日も、明後日も、1週間後も、1カ月後も、1年後も続ける

答えは、【B】です。実は、凪の立ち上げ時、私たちは【A】が正解だと思って、味を変え続けていました。そのほうが「お客様が喜んでくださる」と思ったからです。

「今日より美味しくつくる」では、お客様に支持されない

ですが、1号店の渋谷店は、オープン当初こそ連日満席で売上も好調でしたが、その後1日の来客数が「200人→150人→100人→80人」と減っていき、ガラガラに。原因は、より美味しい一杯を、と味を改良し続けたことにありました。

「同じメニューのラーメンを出すのなら、今日と明日の味が違ってはいけない」ことに私は気づいていませんでした。

飲食業にとって大事なのは、「味を変えること」ではなく、お店の「旗印」になるものをつくり、それを同じクオリティで提供し続けること。それによってお客様が思い出し、繰り返し、来ていただけるのです。

その代表が「すごい!煮干ラーメン」です。

味のクセを強く打ち出せば、より思い出してもらいやすい

強烈な煮干スープに、海の辛銀だれをイン。カラダ中の毛穴から煮干臭が染み込んでいくほどの、ガツンとパワフルな煮干感。煮干が苦手な人は絶対に食べられない攻撃的&個性的なスープです。そこに、極太手もみ麺に幅広の平打ち麺を加え、完成。

夜の街であるゴールデン街だからこそ生まれた、酒飲みのためといってもいい味付けのラーメンです。


すごい!煮干ラーメン

味のクセを強く打ち出しているのは、そのほうが、「思い出してもらいやすい」「印象に残りやすい」からです。

2024年に香港に視察に行ったときのことです。たまたま入った飲食店で、隣に座った香港人カップルから声をかけられました。2人とも「日本が好き」なのだとか。

向こうも私もカタコトの英語で会話をしたところ、「東京で食べたサーディーンフィッシュスープのラーメンが美味しかった」と言っているのが(なんとなく)わかったので、「サーディーンフィッシュって、煮干のこと?」と察した私が、「それは『凪』のラーメンじゃないか?」と聞くと、揃って、「イエス、イエス! ナギ、ナギ!」。

2人が私に話しかけてきたのは、嘘みたいな偶然です。私が「凪の社長」であることは知らず、「東京で食べたラーメンのなかで、『すごい!煮干ラーメン』が一番美味しかった」と言ってくれたのですから、それはもう、嬉しい出来事でした。

これはというメニューをつくったら、同じレベルで提供し続ける、これが飲食事業でブランドをつくるということです。

開発にかけた時間とお客様の支持は比例する

味を変えないことは、お店の看板、ブランドをつくるうえで大切です。

同時に、その味を深くつくり込んでいくことも必要です。

これは、味を変えないこととは矛盾しません。

「1カ月で完成した味は、1カ月で飽きられる。ずっと考えたものは、ずっと愛され続ける」

すなわち、味のつくり込みを続けることで、飽きのこないラーメンを提供し続けることができるのです。

凪では、週に1度、早朝に製造部長と幹部が集まって、試食会を行います。

麺の太さや長さ、小麦粉の配合、煮干の配合、タレのバランス、その場で食べ比べても、違いがわからないくらいの微差の調整を、ああでもない、こうでもないと言いながら、行います。

「すごい!煮干ラーメン」も、開発後の最初の2年間は取材を一切受けず、文字通り、朝から晩までお店にこもりきりで、何度も何度も細かく味の微調整を続けていました。

自分が心から納得して「これだ!」と思えるものにしてから、世に問いたかったからです(沖縄行きの社員旅行の前日、疲れ果てて皆のチケットを持ったまま、お店で寝てしまい、起きられなかったこともありました)。

また、個人の感覚に頼るだけでなく、外部の方に協力をいただきながら、AIを活用した味覚分析センサーや脳波測定器を使い、人がどのようなときに「美味しい」と感じるかを、科学的に探り、味の調整や食べ方の提案などにも生かしています。

そのため、私たちが提供する煮干ラーメンや豚骨ラーメンなども、開業当時と比べると、別物と言っていいほど味付けは変化しています。ただそれは、常連のお客様でも気づかないレベルの、小さなつくり込みを積み重ねた結果です。

そして、その味の深掘りのおおもとにあるのは、より完成度の高い、美味しい一杯をお客様に提供して、喜んでいただきたいという、私たちの思いです。

生田悟志(株式会社凪スピリッツジャパン代表取締役)
1977年7月30日、福岡県北九州市生まれ。白バイ隊員をめざし、専門学校に進み3度挑戦したが失敗。アルバイトで働いていた「一蘭」に入社。繁盛店の店長等を務め、一蘭の東京進出プロジェクトに携わった後、独立。2004年、新宿ゴールデン街に毎週火曜日だけ営業する小さなラーメン店「ラーメン凪」をオープンする。2006年に法人化。凪スピリッツジャパンは、4坪8席ながら月商2,000万円超を誇る新宿ゴールデン街の名店「すごい!煮干ラーメン 凪」をはじめ「ラーメン凪 豚王」など、2025年6月現在、国内外で104店舗を展開(日本、シンガポール、フィリピン、香港、台湾、アメリカ)。アメリカ『TimeOut』誌で、ロサンゼルス・ナンバー1のラーメン店に選出されるなど、全世界で年間800万人に愛されている。グループ年商130億円。自身は2024年よりアメリカ・サンフランシスコ近郊に移住。日本と行き来する日々を送っている。

あさ出版
2025年12月24日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

あさ出版

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