ミステリランキング3冠の『失われた貌』は「やさしさとやるせなさの警察小説」温度感のある警察官×本格推理 本屋大賞にもノミネート[文芸書ベストセラー]

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 3月17日トーハンの週間ベストセラーが発表され、文芸書第1位は『大河の一滴 最終章』が獲得した。第2位は『青天』、第3位は『デスマーチからはじまる異世界狂想曲 35』となった。

 4位以下には今週も「2026年本屋大賞」のノミネート作品が多数ランクイン。今週の注目は5位にランクインした『失われた貌』。同作は2025年8月に刊行された櫻田智也さんによるミステリ長編。物語は、山奥で顔を潰され、歯を抜かれ、手首から先を切り落とされた変死体が発見されるという衝撃的な冒頭から始まる。 その後、ある小学生が「それは十年前に失踪した父かもしれない」と警察を訪ね、複数の事件と過去の失踪が複雑に絡み合い、真相が明らかになっていく。同作の魅力は、刑事による地道な捜査と人物の心理描写、そこに巧みに張られた伏線やどんでん返しが織り交ぜられ、警察小説と本格推理の融合作であること。

 2025年の年末恒例のミステリランキングでは「このミステリーがすごい! 2026年版」国内編1位をはじめ、「週刊文春ミステリーベスト10 2025」国内部門1位、「ミステリが読みたい! 2026年版」国内篇1位と、三冠を達成する偉業を成し遂げた。作家の宮内悠介さんは読売新聞の書評で《けっして派手ではないものの、その裏にはさまざまなフックや伏線があり、飽きさせない。時間のあるかたは、ぜひ再読してみてほしい。きっと、たくさんの発見があるはずだ。》《装いは警察小説、中身は本格ミステリ、そして立ち姿はハードボイルド。次なる古典となるかもしれない一冊の誕生を喜びたい》と評す。また作家の青崎有吾さんは登場する警察官たちは、いわゆる警察モノの様式美からは外れ、リアルな質感と体温を持っているとし、《他愛ないようでいて難しい、「人間味」をにじませるためのバランス感覚。ユーモアミステリを下地とする櫻田智也ならではの武器だ。そして油断ならないことに、事件の核もこの「人間味」の中に隠されている》と解説。《やさしさとやるせなさの警察小説だと思います》と結んでいる。

 2026年本屋大賞の発表は2026年4月9日(木)に予定されている。以下はノミネート作品一覧(書籍名五十音順)。
『暁星』湊かなえ[著](双葉社)
『ありか』瀬尾まいこ[著](水鈴社)
『イン・ザ・メガチャーチ』朝井リョウ[著](日本経済新聞出版)
『失われた貌』櫻田智也[著](新潮社)
『エピクロスの処方箋』夏川草介[著](水鈴社)
『殺し屋の営業術』野宮有[著](講談社)
『さよならジャバウォック』伊坂幸太郎[著](双葉社)
『熟柿』佐藤正午[著](KADOKAWA)
『探偵小石は恋しない』森バジル[著](小学館)
『PRIZE―プライズ―』村山由佳[著](文藝春秋)

 ***

1位『大河の一滴 最終章』五木寛之[著](幻冬舎)

93歳の人間論ーー。人は何かのために生きるのではない。誰かのために生きるのだ。衝撃のベストセラー『大河の一滴』から30年。圧巻の集大成。常に、再生の希望はある。少年時代の引揚体験、自死への欲求、思いがけない病の宣告……あえて、大河の流れに逆らうことを決意した、告白的人間論。(幻冬舎ウェブサイトより抜粋)

2位『青天』若林正恭[著](文藝春秋)

オードリー・若林正恭、初小説!人にぶつかっていないと、自分が生きているかどうかよくわからなくなる――総大三高の「アリ」こと中村昴が所属するアメフト部は、万年2回戦どまり。相手校の練習を隠し撮りして迎えた高3の引退大会では、強豪・遼西学園に打ち破れた。引退後、みなが受験に向かうなか、勉強にも気持ちが入らず、不良になる覚悟もないまま宙ぶらりんの日々を過ごす。自分自身の不甲斐なさにもがき続けるなかで、アリは再びアメフトと向き合う決意を固める。青春の苦みと悦びに満ちた、著者渾身の初小説。(文藝春秋ウェブサイトより)

3位『デスマーチからはじまる異世界狂想曲 35』愛七ひろ[著](KADOKAWA)

サトゥー、ついに”神界”を観光することに!?古竜大陸で原始魔法の修行を終えたサトゥー達は、観光大臣としての任を果たすため、サガ帝国の耳族自治領へ向かうことに。初代勇者が伝えたという和風の町並みを満喫していた一行だったが、突如現れたウリオン神とカリオン神から、神界に出現した「まつろわぬもの」への対処を要請されてしまう。今まで訪れた人族はいないという神々の住む世界に向かうため、サトゥーが経験した驚きの方法とは――?ほのぼの異世界観光記、肉体から解き放たれる三十五巻!(KADOKAWAウェブサイトより)

4位『イン・ザ・メガチャーチ』朝井リョウ[著](日本経済新聞出版)

5位『失われた貌』櫻田智也[著](新潮社)

6位『カフェーの帰り道』嶋津輝[著](東京創元社)

7位『暁星』湊かなえ[著](双葉社)

8位『熟柿』佐藤正午[著](KADOKAWA)

9位『殺し屋の営業術』野宮有[著](講談社)

10位『探偵小石は恋しない』森バジル[著](小学館)

〈文芸書ランキング 3月17日トーハン調べ〉

Book Bang編集部
2026年3月21日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

新潮社

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