【話題の本】『長沢蘆雪』府中市美術館編・著 蘆雪、江戸の「かわいい」

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日本美術史上屈指の「かわいいもの描き」に熱視線が注がれている。

江戸時代に京都で活躍し、円山応挙(1733―95)の高弟として知られる画家・長沢蘆雪(ろせつ)(1754―99)。その多彩な画業を紹介する展覧会が盛況だ(東京・府中市美術館、5月10日まで)。本書は同展の公式図録となる。展覧会が開幕した3月14日に発売され、即重版。販売2週間で3刷が決定し、大判美術書としては異例の売れ行きに担当編集者も「過去にない経験」と驚く。

本書で切り口となるのが、動物や子供などの蘆雪の「かわいい」絵。特に愛くるしい子犬の絵がSNSで話題だ。恐ろしい虎ですら蘆雪の手にかかれば愛嬌(あいきょう)たっぷりに。師・応挙の作品との丹念な比較や、「ゆるい」表現の伝統がある禅画の参照などを通じ、蘆雪芸術の「かわいさ」の源流と本質が解き明かされる。

「かわいい」日本美術の紹介を主導してきた展覧会企画者の同館・金子信久学芸員は「江戸時代にはかわいいものを描く積極的な表現意図があり、その手法において蘆雪は白眉」と強調。「蘆雪の作品は、250年前の人も今と同様にかわいいものを見て楽しんでいたことの証左。それが共感を呼ぶのでは」と分析した。(東京美術・3960円)

櫟原千寿帆

産経新聞
2026年4月19日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

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