
旭山動物園で暮らすエゾタヌキたち
SNSで次々と“おまぬけエピソード”が報告され、近年人気が高まっているタヌキ。そんなタヌキは、一夫一妻となることが多く、パートナーに深い愛情を示すことがあるのをご存知だろうか?
北海道旭川市の旭山動物園には、保護されたり、飼育下で繁殖したエゾタヌキたちが現在18頭暮らしている。
日本に生息するエゾタヌキ・ホンドタヌキの生態や、動物園で会えるタヌキの魅力や可愛いエピソードを写真たっぷりに伝える『タヌキまるごとBOOK』(辰巳出版)より、旭山動物園の飼育員さんが明かすタヌキたちのエピソードを一部抜粋・再編集してお伝えする(写真はすべて同書より)。
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何度引き離しても、寄り添い合う「純愛タヌキ夫婦」ひおとみお
骨盤骨折という重症で保護されたタヌキ夫婦のひお(オス)とみお(メス)は、それぞれ別の場所で、しかも連日で園に運び込まれました。骨盤という部位のため、獣医からは処置は難しいとの判断。数日様子を見て、自力で生きられるようならそのまま飼育を続け、歩けない場合は安楽死も検討する。非常に悩ましい状態で、世話が始まりました。
しかし数日が経つと、2頭とも歩けるように。骨折部分を周囲の筋肉で補い、必死に体を支えているようでした。そこで足への負担を減らすため、砂地の部屋を間仕切りし、個別飼育を開始しました。
ところが数日後、片方が砂を掘って侵入し、2頭でぴったりと体を寄せ合っていました。治療の妨げになるため穴を埋め、2頭を引き離しても、また同じことの繰り返し。何度も続いたため、最終的には同居を決断。今もひおとみお夫婦は、道産舎にある展示場で変わらず寄り添って暮らしています。
飼育員さんも驚き! 一度の出産数は平均で約4頭だけど…まさかの8頭誕生
2024年5月11日、こたろう・うみ夫妻のもとに生まれた仔タヌキたちは、坂の下側にある洞穴の中で産声を上げました。
母・うみの妊娠は把握していたため、仕込んであったカメラのモニターを確認すると、ちょうど出産が始まったところ。母が産んでいるかたわらに父のこたろうが寄り添い、まるで立ち会い出産のような光景でした。
次々と仔が生まれ、数えてみると6頭。さすがにこれで終わりだろうと、その日は帰宅。ところが翌日、改めて確認すると、さらに2頭増えていました。妊娠中のお腹は大きかったものの、まさか8頭もいるとは思っておらず、正直驚きました。しかも産後はお乳の争奪で飲み負けする個体が出るだろうと覚悟していましたが、全頭が元気に育ちました。もちろんいっぺんに飲むわけではないけれど、タヌキのおっぱいは8個。ぎりぎりで数が合いました。
8頭の仔タヌキ、いちい(オス)・かしわ(オス)・こぶし(オス)・ぐみ(メス)・つつじ(メス)・ななか(メス)・はまなす(メス)・むくげ(メス)は、園内の「北海道小動物コーナー」で両親と一緒に元気いっぱいに過ごしています。

生後2週間頃の仔タヌキたち(写真提供:旭川市 旭山動物園)
つきっきりで仔タヌキたちに寄り添い守る“イクメン”の父タヌキ
育児期間中の様子を見ていて、意外だったのは、母タヌキのうみよりも父タヌキのこたろうの方が巣にいる時間が長かったことです。
母が餌を食べに出たり、展示場内を歩き回っている間、仔タヌキたちはずっと父と一緒に巣の中。両親そろっていることもありますが、父だけで面倒を見ている時間も多く、仔タヌキの姿はほとんど確認できません。巣箱は横から開けて中を見られる構造なのですが、父タヌキは体を使って仔を隠し、決して見せようとしません。
ある日、両親が外に出た隙を見て、入口を板で塞ごうとしたら、猛スピードで巣箱に滑り込まれました。普段は穏やかなこたろうですが、子育て中は気が荒く、長靴に噛みついてくることもありました。下手に近づくと父・こたろうがキレまくり、母・うみはどうしていいかわからずオロオロ。でもこんなやりとりも、思い返してみると楽しい日々でした。
親の愛を一身に受けた仔タヌキたちはすくすく成長中!
8頭の仔タヌキたちは、成長するにつれて強い警戒心を持つようになりました。親タヌキは手渡しで餌を食べ、体重計にも自分から乗ってくれるほど人に慣れています。しかし、そのこどもたちは同じ環境で育っているにもかかわらず、なかなか距離を縮めてくれません。人工哺育ではなくタヌキに育てられた影響なのか、はたまた、どういう教育を子にしているのか、こちらが近づくと、スッと間合いを取ります。
1頭だけ少し距離が近めな個体がおり、わずかな期待はしています。ただ、逆に2頭ほどは極端に距離を取るようになり、給餌の際も、他のきょうだいや親が食べている様子を遠まきに見つめるだけ。
今後の変化が気になるところですが、もう一つ大きな問題があります。それは、きょうだいの数が多すぎて見分けがつかないこと。体格も色柄も、驚くほどそっくりなのです。
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- タヌキまるごとBOOK
- 価格:1,760円(税込)
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こうしたエピソードの数々からは、飼育員さんの温かい眼差しも伝わってくる。『タヌキまるごとBOOK』では、旭山動物園も含むタヌキに会える動物園と、そこに暮らすタヌキたちをたっぷり紹介している。SNSでは“おまぬけエピソード”が目立つタヌキだが、野生のタヌキは警戒心が強い生き物だ。その可愛らしい姿を堪能するには、動物園に足を運ぶのが一番だろう。
【関連記事:「本当にタヌキ?」「犬みたい」真っ白な姿が話題 『タヌキまるごとBOOK』から厳選写真“ベスト5”を紹介】では、同書に掲載された多数の写真の中から、編著者が厳選した「ベスト5」を紹介する。
監修:今泉忠明
動物学者。日本動物科学研究所所長。1944年東京都生まれ。東京水産大学(現・東京海洋大学)卒業。国立科学博物館で哺乳類の分類学・生態学を学ぶ。文部省(現・文部科学省)のイリオモテヤマネコの生態調査などに参加。上野動物園で動物解説員を務めたのち、現在は、日本動物科学研究所所長、静岡県伊東市の日本ネコ科動物研究所所長・ねこの博物館館長を兼任。『アザラシまるごとBOOK』『ホッキョクグマまるごとBOOK』(辰巳出版)、『どうぶつ好きのお仕事図鑑』(日東書院)、『飼い猫のひみつ』(イースト・プレス)、『図解雑学 最新ネコの心理』(ナツメ社)、『ざんねんないきもの事典 正・続・続々』(高橋書店)、『ハシビロコウのすべて』(廣済堂出版)など著書、監修書多数。
編著:南幅俊輔
盛岡市生まれ。グラフィックデザイナー&写真家。2009年より外で暮らす猫「ソトネコ」をテーマに本格的に撮影活動を開始。ソトネコや看板猫のほか、海外の猫の取材、その他さまざまな動物たちの撮影も行なっている。著書に『ワル猫カレンダー』(マガジン・マガジン)、『美しすぎるネコ科図鑑』(小学館)、『ふたばPHOTOBOOK』(廣済堂出版)、『踊るハシビロコウ』『マヌルネコ15の秘密』(ライブ・パブリッシング)、『ハシビロコウのふたば』『ハシビロコウカレンダー』『ハシビロコウ手帳』(辰巳出版)など多数。企画・撮影・デザインでは『アザラシまるごとBOOK』『シャチまるごとBOOK』『ホッキョクグマまるごとBOOK』『タヌキまるごとBOOK』(辰巳出版)、『ねこ検定』『ハシビロコウのすべて』『ゴリラのすべて』『ラッコのすべて』(廣済堂出版)がある。
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