【栃木強盗殺人】なぜ絶対に割に合わない「闇バイト」をする若者がいるのか? 「ケーキの切れない非行少年」が狙われる危険性

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犯罪行為が“割に合わない”と判断できない少年たち…

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【試し読み】「ケーキの切れない非行少年たち」とは? 犯罪者となった少年に共通する“認知機能の弱さ”を児童精神科医が解説 『ケーキの切れない非行少年たち』試し読み

犯罪行為の意味を理解できない少年

 栃木県上三川町の民家に住む69歳の女性が殺害された強盗殺人事件は、すでに指示役、実行役が逮捕されている。16歳の少年4人と20代の夫婦。いわゆる「闇バイト」関連の事件だということも判明している。

 犯罪は割に合うものではない。闇バイトの類は特に実行役は使い捨てになるだけで、関わってはいけない――とっくに常識になっているはずなのに、ひっかかる若者は後を絶たない。今回の事件に至っては、犯行計画のあまりのずさんさは、容疑者らの「常識」が致命的に欠如していることを示している。

 むろん彼らが幼かったり、思慮が足りなかったりすることは何ら免罪の材料とはならない。厳罰が望まれるのは当然だろう。

 一方で社会が考えるべきテーマの一つは、こうした犯罪の発生率をいかに低下させるかということだろう。

 残念ながら「犯罪をしてはいけない」「犯罪は割に合わない」「犯罪は人を傷つける」「犯罪は自分のためにならない」といったことをきちんと理解できない人は一定数いる。その中には、認知機能に問題を持つ人が多く含まれていることを著書『ケーキの切れない非行少年』で示したのが、宮口幸治氏(立命館大学産業社会学部教授)だ。彼らはどういう特徴があるのか。改善の手はあるのか。宮口氏のインタビューをご紹介しよう。
(2019年10月30日配信の記事・インタビューを再構成しました)

【画像】「なぜこうなる?」衝撃が広がった非行少年による“ケーキ3等分“の図を見る

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「ケーキの切れない非行少年たち」を、どうすればいいのか?

 
 殺人や強盗、性犯罪などの凶悪な罪を犯していながら、「ホールケーキを3等分する」といった簡単なことすらできないほど、認知機能に問題を抱えた非行少年たち──。そんな非行少年たちの驚くべき実態を明かしたのが84万部を超えるベストセラーとなっている『ケーキの切れない非行少年たち』(新潮新書)だ。

 本書のキーワードの一つは「認知のゆがみ」。本文中では、極めて歪んだ形でものごとを認識している人たちの様子を、著者が勤務した医療少年院のケースなどから詳述している。反響は大きく、「“不良少年”の真実の姿が分かった」「あおり運転やいじめなど、世間を賑わす社会問題の背後にある原因も見えた」などの声が、続々と寄せられている。

 大反響を呼んだ本の著者はいま、何を考えているのか。精神科医で、医療少年院での勤務経験もある著者、宮口幸治氏(立命館大学産業社会学部教授)に、出版後の反響やこれからの課題について、担当編集者が聞いた。(聞き手 横手大輔)

──ご著書が思わぬベストセラーとなりました。ご自身では、ここまで反響を呼んだ理由はどこにあると考えておられますか?

宮口:やはり、オビのイラストの衝撃が大きかったんじゃないですかね。私自身はずっと同じ事を言ってきましたし、関係者向けの本は出していましたが、そんなに注目されなかったですから。

私は2009年から医療少年院で6年間、その後女子少年院に1年間勤めました。そこで、「なんでこんな簡単なことすら出来ないのだろう」と考えさせられるような子たちにたくさん出会いました。彼らは罪を犯して入院してくるわけですが、実際には学校でも家庭でも問題に気付かれず、しんどい生活を続けているケースがほとんどです。その中で、自信をなくしたり、いじめにあったりして、非行に繋がってしまう。こうした実態はこれまで、ほとんど知られていませんでしたから、本書に描かれた「非行少年」の等身大の姿に読者が驚いた、という面もあったかも知れません。

──『ケーキの切れない非行少年たち』の中で、山本譲司さんが記した『獄窓記』(新潮文庫)について言及していらっしゃいますね。秘書給与の流用事件で服役した元国会議員が見たのは、「社会から落ちこぼれてしまった障害者たちの福祉施設」と化している刑務所の実態だった。それの「少年版」が少年院である、と。

宮口:まさにその通りです。『獄窓記』の中に描かれた受刑者たちの姿は、私が見ていた少年院の子たちの未来の姿に重なりました。

私のいた医療少年院でも、「ホールケーキを3等分できない」だけでなく、高校生なのに九九ができない、日本地図がわからない、といった子どもたちもいました。計算問題だと2桁くらいになると怪しくなり、分数の足し算引き算になるとほとんどの子ができません。驚くべきは、それが殺人や強盗、強姦などの凶悪犯罪を起こした少年である、ということです。彼らは「反省以前」の存在なのです。

宮口幸治
立命館大学教授・児童精神科医。一般社団法人・日本COG-TR学会代表理事。京都大学工学部卒業、建設コンサルタント会社勤務の後、神戸大学医学部医学科卒業。神戸大学医学部附属病院精神神経科、大阪府立精神医療センターなどを勤務の後、法務省宮川医療少年院、交野女子学院医務課長を経て、2016年より現職。医学博士、子どものこころ専門医、臨床心理士。児童精神科医として、困っている子どもたちの支援を教育・医療・心理・福祉の観点で行う「日本COG-TR学会」を主宰し、全国で教員等向けに研修を行っている。主な著書に『ケーキの切れない非行少年たち』『どうしても頑張れない人たち』『ドキュメント小説 ケーキの切れない非行少年たちのカルテ』『歪んだ幸せを求める人たち ケーキの切れない非行少年たち3』(いずれも新潮社)、『境界知能とグレーゾーンの子どもたち』(扶桑社)、『医者が考案したコグトレパズル』(SBクリエイティブ)など計90冊。

Book Bang編集部
2026年5月28日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

新潮社

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