【話題の本】『たびたび』さくらももこ著

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■「まる子」作者の等身大

「ちびまる子ちゃん」の生みの親は、エッセーの名手でもある。そんな著者が編集長となり、企画・取材・執筆・挿画を丸ごと手掛けた雑誌が『富士山』(新潮社)だ。平成12~14年に全5号発行された同誌から、香港や富良野などへの取材旅行記11編を収めたのが本書である。

新潮社としては、平成30年の著者没後初となるエッセー集。企画の契機は現在も全国巡回中の「さくらももこ展」。担当編集者の武政桃永(ももえ)さんは、幅広い世代のファンで盛況の会場を見て「『もものかんづめ』の読者や『ちびまる子ちゃん』を小中学生で読んでいた世代に届けようと思った」と話す。3月25日の刊行からリアル書店中心に好調を維持し、現在2刷2万4千部。30~50代の女性から特に支持されているという。

著者の旺盛な食欲と、思い立ったらサワガニ捕りも茶摘みもバリ行きも敢行する活力、誰にでも等身大で接する姿が印象的な本書。「ミッフィー」の作者で当時72歳のディック・ブルーナをユトレヒトに訪ねる回では、温かく率直な筆致で彼の篤実な人柄が語られる。自分も72歳になったらこんな素敵な人に…と夢見る30代の著者に切なくなる。

あとがきは作家の朝井リョウさんが寄せている。(新潮社・1870円)

櫟原千寿帆

産経新聞
2026年6月21日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

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