【産経Books】『縄文の奇跡』新野哲也著

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■日本人を創った縄文人

書籍の中で〝古代史もの〟が相変わらずの人気だ。令和3年には、古代史ファンが注目する青森市の三内丸山遺跡など17カ所で構成する「北海道・北東北の縄文遺跡群」の世界文化遺産への登録が決まり、その人気に拍車がかかっているという。

縄文のタイトルを冠する本書も昨年12月の発売後3刷に。著者は元雑誌編集長で、古今東西の歴史や思想に精通している。本書の副題は「なぜ『縄文時代』は1万年も平和が続いたのか――日本の歴史構造の謎にせまる」。縄文時代の特徴である「平和」の実態に迫るものだ。

その手掛かりの一つが、縄文時代の火焔型(かえんがた)土器。本書の表紙にもあるように、装飾的・抽象的で、造形的に優れている。「戦争についやされたはずのエネルギーがすべて土器の制作にそそがれた」というのが著者の見立てだ。一方、戦争のあった弥生時代の土器の形状は、装飾が簡素で美的な要素に欠けるという。土器に見る人間の内面の豊かさについても、縄文土器に軍配を上げる。

このほか、日本文明の源流としての縄文文化、盛んだった海洋進出、方向・計数感覚の卓越さなど興味深いテーマが少なくない。日本人のルーツを考える上でも斬新で、楽しいエッセー集となっている。(産経NF文庫・980円)

産経新聞
2026年6月28日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

産経新聞社

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