「ドパガキ」って何? 脳が“ドーパミン中毒”になる“快楽と苦痛の関係”を研究者の本から解説

ニュース

  • シェア
  • ポスト
  • ブックマーク

「ドパガキ」という言葉を目にしたことはあるだろうか?

 最近、SNSで多用されるようになった言葉である。2024年にXで「ドーパミン中毒のガキ」と書かれた投稿がバズり、この略称として「ドパガキ」が広まったようだが、そもそもこの「ドーパミン中毒」とは、一体どんな状態を指すのだろうか。

 2022年に、米国のスタンフォード大学医学部教授で精神科医・医学博士のアンナ・レンブケ氏が書いた書籍『ドーパミン中毒』(新潮新書)が日本でも発売されている。

 著者のレンブケ氏は、依存症医学の第一人者でもある。同書をたよりに、「ドーパミン中毒」について解説していこう。

 ***

「ドーパミン」とは何か?

 ドーパミンは、1957年に初めて確認された、脳の中を走る神経伝達物質の一つだ。

 脳内には「ニューロン(神経細胞)」と呼ばれる、主要な機能を担う細胞が1000億個ほどあると言われている。このニューロン同士は「シナプス」と呼ばれる場所で、電気信号と神経伝達物質を使ってやりとりをしている。

 こうした神経伝達物質のうち、「欲しい」という動機に関係しているのがドーパミンで、「好き」だと感じるのとは違うのだという。『ドーパミン中毒』では、こう説明している(以下、引用はすべて同書より)。

 わかりやすいのは、ドーパミンを作れない生き物がどうなるか、だ。

「ドーパミンを作れないように遺伝子組み換えされたマウスは食べ物を求めようとせず、口元に食べ物がある状況ですら餓死してしまう。しかし食べ物を直接口の中に入れられればそれを噛み、食する。その時は美味しく食べているように見える」


ドーパミンがなければ、食べ物を欲しがらず餓死してしまう

なぜ「ドーパミン」で中毒になるのか?

 このように見ると、ドーパミンは生きていくうえで大切な存在であることがわかる。

 しかし、問題はドーパミンが放出され過ぎると、依存や中毒に繋がってしまう点だ。

「私たちは皆快楽を味わうと、その残像として『渇望』を感じることになる。2枚目のポテトチップスに手を伸ばすことであれ、ゲームをもう一回やってしまうことであれ、喜びの感覚をもう一度と欲したり、その“いい気持ち”が消えないようにと試みたりすることは自然なことだ。簡単な解決法としては食べ続ける、やり続ける、見続ける、読み続ける、ということになる」

 厄介なのは、「2枚目のポテトチップス」「もう一回のゲーム」で満足することはなく、より強い快楽を求めてしまうように脳はできているということだ。ポテトチップスやゲームならまだマシで、違法薬物に快楽を求めるようになると深刻だ。

「快楽を得るのにより多くのドラッグを必要とすること、あるいは、一定量の摂取で前より少ない快楽しか感じられなくなることを『耐性』と呼ぶ。耐性は、依存症発症の重要な因子だ」

 ここで言及している「ドラッグ」は違法薬物に限定されない。あらゆる依存症のタネのことである。要するに快楽を味わうためには新しく、より強力な同種の刺激を探し求めざるを得なくなる。これが過剰摂取に繋がり、人を中毒や依存症にさせる仕組みなのだ。

著者:アンナ・レンブケ(Anna Lembke)
1967年アリゾナ州フェニックス生まれ。精神科医。医学博士。スタンフォード大学医学部教授。同大学依存症医学部門メディカル・ディレクター。イエール大学を卒業後、スタンフォード大学で医学を修める。依存症医学の第一人者であり、研究に対する受賞多数。臨床、研究、教育の各分野に力を注ぎ、アメリカの連邦議会が設置する各委員会にも名を連ねる。4人の子供の母親であり、現在、カリフォルニア州在住。前著『Drug Dealer, MD』は全米ベストセラーとなっている。

訳者:恩蔵絢子(おんぞう・あやこ)
1979年神奈川県生まれ。脳科学者。東京工業大学大学院後期博士課程修了(学術博士)。専門は人間の感情のメカニズムと自意識。著書に『脳科学者の母が、認知症になる』、訳書にジョナサン・コール著『顔の科学』(茂木健一郎監訳)、茂木健一郎著『IKIGAI』など。金城学院大学、早稲田大学、日本女子大学非常勤講師。

Book Bang編集部
2026年9月 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

新潮社

  • シェア
  • ポスト
  • ブックマーク