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- ふじさん
- 価格:1,980円(税込)
漫画やアニメ、キャラクターグッズなど、長きにわたり国民的な人気を誇るさくらももこ作品。漫画『ちびまる子ちゃん』は2026年に連載開始から40周年を迎えた。
さくらさんはそのエッセイでもまた、唯一無二で独自の世界観を築き、次々とベストセラーを生み出した。『もものかんづめ』をはじめ数々のエッセイ集は、今なお多くの読者を爆笑させている。
そんなさくらさんの最新エッセイ集『ふじさん』が8月末に上梓された。
その中から「世界の民芸品 インド」を公開する。
旅先での思わぬ出会いと人間観察、そして完璧なオチ。「まる子」らしさも存分に感じられる、ファンにはたまらない一編だ。
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民芸品というものは面白さ、美しさ、味わい深さ、かわいらしさなどいろんな要素をあわせ持ち、私は好きでたまらない。人間って、いろんな物を作るよなァと思う。
インドには、細かい細工の民芸品がいっぱいある。貝や石を使って細かい模様を描いてある小物や、小さいミラーがたくさんくっついている刺繍してある布や、小箱に小さくもややこしい絵が描かれていたり、「よくやるよなー」と思うことが成し遂げられている。
私が特に気に入っている模様皿は、大理石に細かなトルコ石やめのうなどの石とパールが埋め込まれている物なのだが、これは九年位前、インドに行った時にどこかの村の土産物屋で買った物だ。
その土産物屋では、品物を売りつつ、商品を作る作業も見られるようになっていた。と言っても別に立派な工場が見学できるようになっていたわけではなく、土産物屋の片隅の庭などで、何人かのインド人男性らが汗だくになりながら細かな作業に没頭しているのを見るだけというシステムだった。
店のオヤジは汗だくのインド人男性たちを指さし、「あんなにがんばって作っているのだから買った方がいいよ」などと皿を買うことをすすめた。一枚、約3~4万円という値段だ。
これが、パリとかニューヨークの、デパートのショーケースに並べてあったら一枚3万円ぐらいするだろうなァと思うのだが、インドの名も知らぬ村の土と汗の匂いのするこの店で、汗だくの従業員を見せられて3万円だと言われても、全然説得力がない。
私は「…ちょっと高いんじゃないの」と言うとオヤジは「高い、ノ~~~ッ!!」と叫び、ベリーチープだとか、安い安いと日本語もまじえて主張し続けた。
三枚買うからまけてくれと頼み、たしか全部まとめて7万5千円ぐらいで買ったと思う。持って帰ってくるのは大変だった。重いし、割れちゃいけないと思って気も使いながら運んだ記憶がある。
それからしばらく経ったある日、たまたま都内の某デパートで、インドの民芸品即売会をやっており、ちょっとのぞいてみたところあの大理石のお皿があった。
私が買った物より、だいぶ小さいサイズのうえ、細工もずいぶん大雑把にしてあった。
なのに、10万円で売られていた。
あのオヤジの「ノ~~~ッ」という叫びはホントだったのだ。安い安いという叫びは、心の底から真剣に発せられていたのだ。
苦労して持ってきたかいがあった。インドで見た時には高いように思えたが、よく考えてみれば、インド人男性が汗だくになって、何日もかかってあんなに一生けんめい作っているんだから、3万円じゃ安いよな、と思う。
忘れていたが、あのオヤジは皿を買った時おまけに小さなゾウの置き物を二個もくれたのだった。石でできてるそのゾウの体にも貝やトルコ石などで細工がしてあり、日本のデパートで買えば一個5千円ぐらいはすると思う。
オヤジ、店の繁栄を祈るよ。
さくらももこ
1965(昭和40)年、静岡県清水市(現清水区)出身。1984年、漫画家デビュー。1986年、『ちびまる子ちゃん』を「りぼん」に連載開始、1989(平成元)年、講談社漫画賞を受賞し、1990年にはTVアニメとなって国民的人気を獲得。エンディングテーマ「おどるポンポコリン」の作詞も担当、同年のレコード大賞に輝いた。以来、ナンセンスとメルヘンとお笑いが絶妙にブレンドされた作品世界で大活躍を続ける。エッセイ『もものかんづめ』三部作はすべてミリオンセラーを記録。漫画『コジコジ』、『神のちからっ子新聞』、エッセイ『あのころ』三部作、『ひとりずもう』など。さくらももこ編集長の雑誌「富士山」(全5号)も話題をよんだ。
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1896年(明治29年)創立。『斜陽』(太宰治)や『金閣寺』(三島由紀夫)、『さくらえび』(さくらももこ)、『1Q84』(村上春樹)、近年では『大家さんと僕』(矢部太郎)などのベストセラー作品を刊行している総合出版社。「新潮文庫の100冊」でお馴染みの新潮文庫や新潮新書、新潮クレスト・ブックス、とんぼの本などを刊行しているほか、「週刊新潮」「新潮」「芸術新潮」「nicola」「ニコ☆プチ」「ENGINE」などの雑誌も手掛けている。
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