東京の御三家・武蔵中学に合格 医師の阿部智史さんが無意識に実践した「人生の攻略法」

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現役医師の阿部智史さん(写真:著者提供)

 現役医師・阿部智史さんは、生粋のゲーマー。

 東京の御三家・武蔵中学に入学、成績上位をキープしていたものの高校卒業直前にゲーム依存になり、高卒でフリーター生活を送ること2年、一念発起して医師になった異色の経歴の持ち主だ。

 その阿部さんが自身の失敗と経験を元に、「ゲームと戦略的に付き合うメソッド」をまとめた『ゲームしながら受験で勝つ!─医師が教える子どもが自ら学び出すセルフコントロール力─』(新潮社)を上梓した。

 小学4年から大手中学受験塾の日能研に通い始めた阿部さん。6年生のあるときから劇的に成績が上がったのは、いま振り返ると「ゲーミフィケーション(Gamification)」という最先端の学習理論を無意識で実践していたからだといいます。

 中学受験とゲームの意外な共通点とはなにか? 阿部さんの著書から一部抜粋・編集して紹介する。

 ***

 私が小学生だった90年代後半でも、多くの子どもたちが「ゲーム時間制限」や「ゲーム禁止令」という厳しい掟に縛られ、「ゲームをしたくてもできない」というもどかしさを抱えていました。特に、人一倍ゲーム好きだった私は、もどかしさも人一倍。何とか30分以上ゲームをしようと、布団の中にゲームボーイを持ち込み、親に隠れてこっそりプレイするなどしてしのいでいました。

中学受験とゲームの意外な共通点を見つける

 しかし、そんな厳しい状況にも“抜け道”はありました。当時、どの学校のどのクラスにも必ず一つは存在した、まるで「ゲーム解放特区」とでも呼ぶべきゆるい家庭です。

 ゲーム時間の制限がなく、数多くのソフトを所有している、子どもたちにとっては天国のような場所です。学校の先生や、親たちはその天国を“たまり場”と呼び「〇〇君の家がたまり場になっている」などと言って問題視していましたが(笑)。

 放課後になると、毎日のように友達と共に“天国”に足を運び、時間を忘れて「大乱闘スマッシュブラザーズ」や「マリオカート64」に没頭しました。友達の家でのゲームプレイには、負けたら次の子に交代するという暗黙のルールがありました。このルールが、私にとっては上手くなればなるほど長く遊べるという理解となり、ゲーム上達への強力な原動力になったのです。

 好きで得意なゲームに集中し、腕を磨く。すると目標が達成でき、ゲームの世界でさらに活躍できる。この好循環がぐるぐると回り続けていました。

 毎日のように開催されていた「天国(たまり場)でのゲーム大会」は、単にゲームの世界に浸る楽しさだけでなく、「人と競い合う喜び」や「勝利のために努力する面白さ」を教えてくれました。

 限られた時間の中で、どうすればライバルに勝てるのか? どうすればもっと上手くなれるのか? 試行錯誤を繰り返す中で、自然と戦略的思考力や状況判断能力、そして諦めない粘り強さが身についていったのです。まさに、遊びの中で、ゲーマーとして自分自身で考えて学ぶことで、自走する力の基礎が築かれていったのだと思います。

 そして、驚くべきことに、これらの経験は後の中学受験、大学受験、医師の国家試験でも、大いに役立つことになったのです。


阿部智史さん

ゲーミフィケーションで武蔵中学に合格

 小学4年生になると、親に勧められるまま中学受験への道を歩み始め、日能研の門をくぐりました。勉強そのものは嫌いではありませんでしたが、ゲームのような熱狂を感じることはありませんでした。

 唯一の原動力となっていたのは、塾のテストの順位に応じて親が買ってくれるトレーディングカードでした。「クラスで1位なら3パック、2位なら2パック」という具合に、ご褒美のカードを手に入れる喜びが、何となく勉強へと駆り立てていたのです。

 

 しかし、小学6年生の頃、突如として衝撃的な気づきが訪れました。

「待てよ、この受験勉強、ゲームとそっくりじゃないか?」と。

 塾での勉強も、テストごとに偏差値が出て、席順が決まり、クラスも上下する。まるで、

「ドラゴンクエスト」や「ファイナルファンタジー」のようなRPGゲームと似たスモールステップの評価システムが存在していたのです。

 この発見以降、私の勉強スタイルは一変しました。ドラクエで経験値を貯めてレベルを上げ強敵に挑むように、基礎演習を地道に積み重ね、応用問題に挑戦する。しかも、テストごとの競争は、まるで「マリオカート」の対戦モードのような刺激的な楽しさがありました。
 これまで自宅のテレビの前や友達の家でゲームをしながら培ってきた目標達成への執着心を、勉強に注いだ結果、成績は驚異的な速さで上昇して行きました。

 

 後年になって、これが「ゲーミフィケーション(Gamification)」と呼ばれる概念そのものだったことを知りました。

 ゲーミフィケーションとは、ゲームの要素や技術をゲーム以外の分野に応用する手法です。ポイントやバッジの獲得、レベルアップシステム、ランキングなど、ゲームの特徴を活用して、人々の行動や学習を促すのです。

 振り返ってみれば、塾のテストの順位に応じたカードの獲得や、偏差値の上昇、席次の変動など、すべてがゲーミフィケーションの要素を含んでいました。ゲーム好きが高じて、知らず知らずのうちに、最先端の学習理論を実践していたわけです。

 

 最終的に、男子校御三家の一つである私立武蔵中学への合格を勝ち取ることができました。これは、「勉強×ゲーム」の相関関係や相乗効果、つまりゲーミフィケーションの威力を身をもって体験した、私にとって初めての経験だったのです。もし4年生の時点でこの気づきがあれば……とんでもないコトになっていたかもしれません(笑)。

 中学受験の経験は、後の人生においても、様々な課題をゲーム的な視点で捉え、楽しみながら克服していく術を教えてくれました。

 まさに、ゲームが私に授けてくれた「人生の攻略法」と言えるでしょう。

阿部智史(あべ・さとし)
1987年生まれ。家庭医療専門医・指導医。医療法人救友会理事長、東海大学医学部付属病院総合内科学客員講師。中学受験の難関とされる御三家・私立武蔵中高から東海大学医学部へ。高校時代から高校卒業後の3年間でゲーム依存になりどん底を味わった経験から、2021年に仲間とDr.GAMESを設立。日々の診療の傍らゲームの問題で悩む親子やゲーマーのサポートをしている。2026年7月現在も熱心なゲーマーであり、複数のオンラインゲームで全国ランキング1位の経験を持つ。東京2020オリンピック選手村ドクター。2024年には東海大学医学部付属病院スポーツ外来にeスポーツ外来を新設した。1児の父。『ゲームしながら受験で勝つ!─医師が教える子どもが自ら学び出すセルフコントロール力─』は初めての著書になる。

新潮社
2026年9月30日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

新潮社

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株式会社新潮社のご案内

1896年(明治29年)創立。『斜陽』(太宰治)や『金閣寺』(三島由紀夫)、『さくらえび』(さくらももこ)、『1Q84』(村上春樹)、近年では『大家さんと僕』(矢部太郎)などのベストセラー作品を刊行している総合出版社。「新潮文庫の100冊」でお馴染みの新潮文庫や新潮新書、新潮クレスト・ブックス、とんぼの本などを刊行しているほか、「週刊新潮」「新潮」「芸術新潮」「nicola」「ニコ☆プチ」「ENGINE」などの雑誌も手掛けている。

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