【産経Books】『「かたち」の文化論』十四代今泉今右衛門、一条真也著 寛容な心を育む源泉

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工芸文化と儀礼文化の接点には何があるのか―。本書は、江戸時代から続く「鍋島焼」の伝統を受け継ぐ人間国宝、十四代今泉今右衛門氏と一般財団法人冠婚葬祭文化振興財団理事長の一条真也氏による異業種対談。日常生活の中に息づく「かたち」や「うつわ」から日本文化の深層に切り込む斬新な文化論だ。

「自然と人との共生」こそが伝統工芸の本質と説く今泉氏。自分のわがままが許されず、最後は「自然の力を受け入れざるを得ない」とし、そこから器をつくる陶芸の根本には「受け入れること」=心の寛容がおのずと育まれていく、と話す。日本のこの価値観は今後の国際社会でますます大切になってくる、とも。

これに対し、一条氏も人類が持続するための「共生の思想」のモデルは実は日本にあると強調。聖徳太子が提唱した「和」に基づく神道・儒教・仏教の共生文化の重要性を説く。器から始まった対話は縦横無尽に広がり、刺激的な展開をみせる。

この他、冠婚葬祭は「日本文化の集大成」、その担い手は「文化の防人」である―。AI時代にはますます手仕事の重要性が高まる―など興味深い議論が少なくない。日本文化を考えるヒントが詰まった一冊だ。(産経新聞出版・1650円)

産経新聞
2026年9月27日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

産経新聞社

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