僕の人生には事件が起きない
2019/01/11

食べログ信者ハライチ岩井が3.04の店で味わった神の裁き

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お笑い芸人・ハライチの岩井勇気による初めての連載エッセイ。お笑いのこと、ラジオのこと、アニメのこと、この世界のこと……独自の視点で日常に潜むちょっとした違和感を綴ります。今回のテーマは「食べログ」です。

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第9回「食べログ」


イラスト:岩井勇気(ハライチ)

『食べログ』というサイトがある。僕は宗教などにハマったり、何かを熱狂的に信仰したりすることはないが、何か信じるものがあるかと聞かれたら唯一『食べログ信者』ではある。

 ご存知の通り、『食べログ』とは飲食店を検索するサイトだ。飲食店がユーザーの投稿によって点数付けされ、その平均点がサイトに反映される。僕は人と食事に行く時は大体このサイトを利用して店を予約する。なぜなら、一緒に食事に行く人の食の好みがわからない時、この『食べログ』は評価を統計で表してくれているので「大抵の人がいいと思っている」という理論で点数の高い店を予約しておけば、高確率で満足してもらえるからである。これに気付いた時から僕は熱狂的な『食べログ信者』となったのだった。

 数年前、僕は『食べログ』を知り、その素晴らしい教えに魅了された。そして月額300円+税というお布施を支払うことによって『食べログ』という神と契約したのだ。すると神は僕に、検索したお店を点数の高い順にランキング形式で見られるという目を授けてくれた。また時には、お店によってクーポンを発行してくれるというご加護もあった。

 さらに神は、お店の点数5点満点中、3.3点以上で普通、3.5点以上の店は文句無くいい店だということも教えてくれた。いい店というのは味はもちろんの事、店の雰囲気、接客の良さなど全てが揃っているということだ。故に、僕は3.5点以上の店に行って嫌な思いをしたことはほとんどない。

 しかし、それでもたまに神の教えに背き、点数の低い店に行ってしまうことはある。そうすると、僕に神の裁きが下る。

 日曜日の遅い時間、休日で店も閉まり始めた頃、友達とまだ営業している店を探していた僕は、遅くまでやっている3.07点の韓国料理屋に入った。席に着き、メニューを見て店員を呼ぶと、ほとんど日本語の喋れない若い韓国人の男性店員が来た。カタコトで「お決まりですか?」と言う店員に、僕らは飲み物と、チャプチェ、海鮮チーズチヂミ、白菜サラダ、チーズタッカルビを注文した。しばらくして運ばれてきたのが、チャプチェと、チーズの入っていない海鮮チヂミ、白菜サラダを頼んだはずが白菜キムチ、そして確認するとチーズタッカルビは忘れ去られていたので店員に「もう帰りますね」と言い、会計を済ませ店を後にした。

 また別の日、一人で昼食をとろうと、歩いていて見つけた3.05のラーメン屋に入った時のこと。その店のおすすめと書いてあった期間限定の海老つけ麺というメニューを頼むと、しばらくして麺とつけ汁が運ばれてきたが、明らかにつけ汁が少なく感じた。案の定、麺をつけ汁につけて食べていると、つけ汁はどんどん減っていき、麺を3分の2ほど食べたところでつけ汁が無くなってしまった。僕は店員を呼び「すいません、つけ汁を追加で注文したいんですけど」というと、店員は「期間限定メニューはつけ汁の追加注文やってないんですよ」と言った。だったらあの少ないつけ汁でこの麺の量をどうやって完食しろというのだ。しょうがなく、器に残ったつけ汁にこすりつけながらも麺を食べていたが限界がある。

 ふとカウンターを見ると、手書きで「スープ割りあります!」の文字。つけ汁が余った時に、濃いつけ汁を割って飲むダシのことだ。このつけ汁のどこに余る要素があるんだ。腹が立ったので、つけ汁をこそぎ取ってピッカピカになった器を店員に差し出し「スープ割りください」と言った。見てわかる通り、割るものなんてないですけどね、という意味の最後の抵抗を込めて言ったのだ。

 すると店員は「わかりましたー」と気力のない返事と共にピッカピカの器に透き通ったダシを入れて僕に差し出してきた。図太いやつだ。こうなるともう戦争である。僕は大して味のないダシを全部飲み干し、素の麺をずるずるとすすって完食した後「会計お願いします」と言い代金を払って店を出たのだ。

 また別の日。友達と3.04点のチェーン店のお好み焼き屋に入った時、席に着き、メニューを見ると、単品のメニューと、時間制限での食べ放題メニューがあった。「単品でいいか」という話になり、店員を呼び、店のおすすめのお好み焼き、ホルモン焼き、イカの丸焼き、じゃがバターに、飲み物はウーロン茶とコーラを注文した。すると店員が「飲み物は単品で頼むより、2杯以上飲むならドリンクバーの方がお得ですよ」と言うのでメニューを見てみると単品のドリンクが220円、ドリンクバーが290円だった。お酒じゃないのでそんなに飲まないつもりではあったが、断るのも面倒なのでドリンクバーの方にした。

 注文してしばらくすると、ホルモン焼きと、イカの丸焼きと、じゃがバターを持ってきたので僕らは鉄板に乗せ焼き始めた。すると、いくら待ってもそれらが焼ける気配がない。それどころか鉄板の火力は弱いままで、ずっとチリチリチリッという小さな音を立てながらくすぶり続けている。心配になりテーブルの横を見ると、鉄板のスイッチが“保温”に入ってる。おかしいと思い、スイッチの保温の逆側を見てみると文字が削れてしまっていてよく見えない。それが“加熱”なのか“切る”なのかわからないので迂闊に触ることができないと思った僕らは、店員を呼び「これ、全然焼けないんですけど?」と聞いた。すると店員はテーブルの横のスイッチを逆側に入れ「これで大丈夫です」と言った。

 大丈夫です、とは何か? 申し訳ございませんでした、の間違えではないのか? と疑問に思いながらも鉄板が温まってくるのを待っていると、別の店員がお好み焼きのタネを持ってきて「今から鉄板で焼かせていただきます」と言って僕らのテーブルの鉄板にタネを乗せようとした。僕は少し焦りながら「いや、鉄板のスイッチが保温になってたからまだしっかり熱くなってないんですけど」と言うと店員は、「置いていれば焼けてくると思いますので」と言って焼くのを強行しようとした。さすがに恐怖を覚え、店員を止めて「まだ全然鉄板が熱くなってないし、他の焼き物もまだ焼けてないから後にしてください」と言うと、「では後ほど来ます」と厨房に下がっていった。

 しばらくしてホルモンなどが焼けて、食べていると再び店員が来て「お好み焼きを焼かせていただきます」と言い鉄板にタネを乗せ始めた。一通り形を形成した後でテーブルの端にあるストップウォッチを指差し「そちらを押していただいて、6分経ったらひっくり返してください。その後さらに6分経ったら仕上げに参りますのでお呼びください」と言った。結局焼くのは俺らなのか。と思ったが、言う通り表面6分、裏面6分焼き、店員を呼ぶボタンを押した。しかしそこから4分近く店員が来ないのだ。それではストップウォッチを使って、きっちり焼いた意味がまるでない。表面6分、裏面10分になっているではないか。遅れて店員が来て「仕上げます」と言いながらソースとからしマヨネーズをかけた。それくらいの仕上げなら6分の時点でこっちでできるわと思ったが堪えた。

 その後お好み焼きを食べていると、店に入って30分ほど経った時、店員が来て「すいません。そろそろラストオーダーのお時間です」と言うのだ。そんなにすぐラストオーダーになるのなら、入店した時にラストオーダーが近いことを告げないか?と思うのと同時に、ドリンクバーじゃなくて単品のドリンクで良くなかったか?と不信感を抱いた。一緒に来た友達も呆れ、もう帰ろう、という話になり、さっさとお好み焼きを食べ、伝票を持ってレジに行くと、レジでは子連れの母親3人がレジの店員と店のクーポン券の割引をめぐって熾烈な言い争いが行われていた。さながら昼の番組の再現VTRのような光景に、「こたえてちょーだいかよ!」と喉元まで出かかったが抑え、順番を待っていたが、待てど暮らせど言い争いは終わらない。埒が明かないと思った僕らは3800円の会計だったので、レジにポンッと4000円を置き「ごちそうさまでしたー」と店を去ろうとした。すると店を出たところで店長らしき人に呼び止められた。そして「ご迷惑をおかけしました。これ、お釣りと、よかったら次回お使いください」と店のクーポン券を渡されたのだ。これが原因でもめてたんだろ!と思いながらも、とりあえず受け取った。

 帰り道、友達と「すごい店だったな」と話していたが、それにしてもラストオーダーの早い店だったなと思った。夜9時に入り、9時半にラストオーダーを聞かれたのでちょっと引っかかり、ネットで閉店時間を調べてみると、11時閉店なのだ。しかもラストオーダーは10時半だった。店員は恐らく他の席の食べ放題のラストオーダーと間違えて僕らに伝えてきていたのだった。3.04点のめちゃくちゃな店に、僕らは不満でお腹いっぱいにさせられた。

 こうして点数の低い店に行き、神の裁きを受けた僕はさらに『食べログ』に対しての信仰心を強くするのだった。今や、店を見るだけで数字か浮かび上がってくるように感じる僕は、今後も『食べログ』を使い続けるだろう。そして『食べログ信者』として、こうやって布教し続けるのである。

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次回の更新予定日は2019年1月25日(金)です。

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