敵中の人 評伝・小島政二郎
内容紹介
大家から嫌われた大家の毀誉褒貶
これだけ大作家から嫌われた作家も珍しいだろう。逆に言えば「虎」に嚙みつかれた「山猫」とでもいった存在。しかしながら『一枚看板』(一九二二年)で文壇デビュー、その後も次々と人気作を発表し続け、芥川・直木賞の選考委員も務め、『三百六十五夜』の映画化など目覚ましい活躍で知られた昭和の名人作家でもある。
ことに戦中に発表された『眼中の人』は大正文壇史を生き生きと描く貴重な資料でもあり、食の随筆『食いしん坊』は大きな反響を呼んだ。
本書は、永井荷風、今東光、永井龍男、松本清張、立原正秋の五人からどのように嫌われたか、そのことによって「山猫」ぶりを浮かび上がらせ、反感を物ともせずに活躍した昭和の名人作家がたどった生涯を描いた、脇筋からの大著ともいえる。
著者の亡父は作家の津田信。芥川・直木賞の候補に八回上がったものの大成せず、小島に師事しながら立原正秋、高井有一らと同人誌「犀」に参加した。
小島に対する彼らの批判が自業自得によるものだったとしても、著者の正当に再評価をすべきだという強い志のもと、本書は「悪口で綴る小島政二郎」という体裁をとりながら、亡父の意思を継いだ復権の書となっている。
データ取得日:2024/04/13
書籍情報:JPO出版情報登録センター
※書籍情報の無断転載を禁じます