幼年 水の町
内容紹介
追憶のエッセイと掌編幻想小説
クラスの「美少女」を授業中にスケッチする美術教師、カッパと呼ばれる子に誘われたお好み焼屋、ぬめぬめとした鮒が泳ぐ池に落ちる自分、「禿山の一夜」を園児に聴かせてイメージを描かせる先生、クリスマスに焼きりんごを作る母、縁側で落語の練習をする妹、逆さ蛍と渾名された優等生の美しすぎる母親に言い寄る教師たち、音楽の授業でピアノ伴奏をして見つけた和音のよろこび、飛ぶ夢、落ちる夢、夕食後、独りトランプをする父の顔を照らすカードの照り返し――こんこんと湧きあがる追憶は読者を不思議な想念と思索に誘う。水の町・深川に育った著者はじめての幼年をめぐるエッセイ集。
そして、
「何度聞くんだよ、失礼な。アタシャ、今年で八十五、いや六だったか」。すべての臓器が衰弱し、「いつ何があっても不思議はない」老女とその自宅ホスピスに介護補助員として通う女性の語りが交錯する掌編「スイッチ」に流れる静謐な味わい。
女性は老女に一篇の詩を読み聞かせながら「夜明けに小川のせせらぎのような音を立てて流れる」隅田川に惹きいられてゆく。老女が亡くなって数週間後のある日、女性は隅田川の岸辺で不思議な少女に出会う。
データ取得日:2024/04/18
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