読書感想文の「書き出し」は「なぜ?」から始めてみよう 教育学者・齋藤孝が“最高の読書感想文”で子ども達に伝えたいこと
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- カンタン! 齋藤孝の 最高の読書感想文
- 価格:792円(税込)
夏休みの宿題の定番、読書感想文で特に難しいのは、「書き出し」だろう。この時期に「読書感想文 書き出し」という検索ワードが多くなることからも、子どもたちの苦戦している姿が目に浮かんでくる。
そんな悩みに、教育学者の齋藤孝さんは3つの“法則”をアドバイスしている。1つ目は「書きたいことから書く」、2つ目は「本を読んだキッカケから書く」(詳しくは前編記事「『読書感想文』で特に難しいのは最初の『書き出し』かも…教育学者・齋藤孝が授けるカンタンな方法とは?」で)。
今回ご紹介するのは、3つ目の法則である「『なぜ?』から始める」。具体例を交えながら子どもにも分かるように伝えてくれる『カンタン! 齋藤孝の最高の読書感想文』(角川つばさ文庫)より、その理由をみていこう。
※以下、『カンタン! 齋藤孝の最高の読書感想文』の一部を元に再編集しました。
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■書き出しの法則 (3)「なぜ?」から始める
なぜ~なのか? どうして~したのか? という疑問(ぎもん)を自分自身に突き付けて、それに答えていくやり方を「問いを立てる」と言います。
「なぜ主人公はあんなことをしたんだろう」
「僕はなぜこう感じたのだろうか」
「作者は何を一番言いたかったのか」
自分が気になったところに「なぜ?」という疑問を持って、それに対する考えを書いていく。
答えが文中にある場合もあるし、自分の考えが答えとなる場合もあります。
『走れメロス』を例にとってみましょう。
主人公メロスは、地方に暮(く)らす一介(いっかい)の牧人(ぼくじん)にすぎませんでした。その男が、暴君(ぼうくん)として恐(おそ)れられる王を倒(たお)そうと、王宮に乗り込(こ)んで捕(と)らえられ、死刑(しけい)を宣告(せんこく)されます。しかしメロスは、命など惜(お)しくはないが妹の結婚式にだけは出席させてくれ、と王にうったえ、その間の身代(みが)わりとして親友のセリヌンティウスを指名します。
どうですか。まだ話半ばなのに「なぜ」がいっぱいだね。
その中から、書き出しに、一つの問いを立ててみましょう。
ぼくは初め、全く理解(りかい)できなかった。なぜメロスは親友を身代わりにできたのだろうか?
さて、これに答えていきますよ。
メロスは相手が王であっても「許(ゆる)せない」と思ったら挑(いど)みかかってしまう「正義漢(せいぎかん)」で、「猪突猛進(ちょとつもうしん)」タイプです。「人の心を疑(うたが)うのは、最も恥(は)ずべき悪徳(あくとく)だ」が、彼のモットー。つまりメロスは、人を疑うことが大嫌いなんだね。
だからメロスは、何のためらいもなく、自分の親友を危険な身代わりに指名します。自分はセリヌンティウスを信じているし、向こうもそうだと疑わないから、そんなことができてしまう。ビックリだよね。
だけどもっと驚(おどろ)いたことに、セリヌンティウスもそれを断(ことわ)らないんだ。