大矢博子 ジャニ読みブックガイド
2017/07/19

「忍びの国」の主人公は「まんま大野智くん!」知念侑李との関係性にも注目[ジャニ読みブックガイド第5回]

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「忍びの国」の主人公は「まんま大野智くん!」知念侑李との関係性にも注目[ジャニ読みブックガイド第5回]

 偽りだらけの浮世でもこの愛だけ信じている皆さん、こんにちは。観たよ、観てきたよ話題のあの映画! 書きたいことがたくさんあるんで、前振りなしでいきなり始めます。

■嵐・大野智主演、Hey! Say! JUMP・知念侑季出演!「忍びの国」

 現在絶賛公開中の映画「忍びの国」(東宝)の原作は、和田竜の同名小説『忍びの国』(新潮文庫)。
 舞台は戦国時代、忍びの者たちが暮らす伊賀の国。伊賀者どうしの小競り合いで弟を殺された下山平兵衛は、金に汚く人命を何とも思わない忍びたちに愛想を尽かす。こんな国は滅ぶべきだと、隣国・伊勢を乗っ取った織田信長の次男・信雄のところを訪れて「伊賀を攻めて欲しい」と願い出た。だが、忍びたちの作戦は……というのが小説・映画両方に共通する設定。織田信雄軍が伊賀を攻めた「第一次天正伊賀の乱」が題材だ。

 この作品、経緯がちょっと変わっている。もともとシナリオライターである著者がまず2005年に「脚本・忍びの国」を書き、小説に書き直して2008年に出版。その小説を読んだ中村義洋監督が感動して映画化を決め、あらためて和田竜が脚本を書き直したという、ぐるっと一周したみたいなことになっているのだ。

 最初に書いた脚本は『忍びの国 オリジナル脚本』(新潮社)として出版されているので、今回の映画と比べてみるのも一興。

 つまり映画の脚本も小説も同じ人が書いてるわけで、「原作とイメージが違う」といった心配はまったくない。もちろん映画での改変はあるんだけど(それは後述)、話の流れやテーマはまったくブレてないので、小説が先でも映画が先でも、どちらでも違和感なく楽しめるようになっている。

 その上で、映画・小説ならではの技法もある。テーマは映画の方がわかりやすく映像で演出されているし、大勢の忍びたちが怒涛をうって戦場に集結する場面や大人数での殺陣など、壮大且つスピーディな迫力は映像ならでは。逆に小説では、地の文に文献や史料からの引用がたくさん入るのが特徴だ。人物の言葉遣いが現代的な分、地の文の硬さでいい感じにバランスをとっている。これは映像では再現できない。映画・小説ともにそれぞれの武器を活かしてるのがよくわかる。

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イラスト・タテノカズヒロ

■無門はそのまんま大野くんだ!

 物語の主人公は無門と呼ばれている下忍(普段は百姓で、事あれば忍びとして動く)。自他ともに認める伊賀ナンバーワン忍者だ。でも基本的には怠け者で、働くのはお金のため。妻のお国の尻に敷かれ、伊賀一の忍びのくせにお国にだけは頭があがらないという恐妻家でもある。これを大野くんが演じている──んだけど! これが!
 もしあなたがまだ映画も小説も未体験なら、まず「無門は大野くん」という前提で小説を読んでみてほしい。もうね、笑うから。まんま大野くんだから。たとえば無門が最初に登場する場面。門が開き、煙の中からひとりの男が出てくる。それが無門。そして最初の一言が……

「けむ」

 これだからね。「煙いっ!」とかじゃなく、ただ「けむ」。しかも味方はみんな戦ってるのに、無門は自分の仕事は済んだからと「じゃ、わしは家に帰りますんで」。なんだかバラエティで大野くんがよく言う「おれ、帰っていい?」みたい。嘘をついたとき無門の眉のあたりがヒクヒク動くのは、ババ抜きでジョーカーを引いたときに大野くんの鼻がヒクヒク動くのを思い出す。小説の段階で和田竜が大野くんを当て書きしたんじゃないかってほどなのだ。

 でもそれだけじゃない。普段はやる気がなくてダラダラしてる無門は、いざ戦いとなるとめちゃくちゃ機敏でめっぽう強い。トークにはあまり参加しないけど、いざ歌が始まるとキレッキレのダンスを見せる大野くんにまさに重なる。努力を外に出さず、何でもいとも簡単にこなしちゃう(ように見える)ってのも、無門と同じだ。

 戦いの場面は映画もすごいぞ。特に殺陣! 殺陣に大野くんも参加したそうで、普通の時代劇ではちょっとありえないような動きがついている。殺陣というよりダンス。振り付け。ここ、「Sakura」のイントロの振りっぽいぞ、なんてところもあってニヤニヤしちゃった。後ろで入り乱れる多くの忍びたちもまるでアクロバット群舞で、あそこにA.B.C-Zが交じっててもあたしゃ驚かないね。塚ちゃんとかマジでいそう。

 でも、だからこそ。ラスト間際、無門の感情が爆発する場面では鳥肌が立った。これが大野智かと。それまでの〈いつもの大野くん〉は、すべてこのためにあったのかと。見ている者の身を切るような無門の慟哭。大野智の代表作と呼ぶにふさわしい。

■知念くんの信雄や小説だけの登場人物をジャニ読みする

 他の人物に目を向けてみよう。敵の大将、織田信雄を演じる知念くんは、偉大な父のプレッシャーに潰されそうになりながら虚勢を張るボンボンの感じがすごく出てた。
 圧巻なのは、家来たちの前で泣き出すところ。ずっと耐えてきたのが、ついに堰が切れたって感じで、子どもみたいにギャン泣きしながら「おまえたちに、わしの気持ちがわかるかぁっ!」って叫ぶのね。家来の結束を固めるこの大事な場面が見事に再現されていた。
 知念くんは常々「大野くんが憧れ」って公言してるけど、そんな知念くんにとって、無門に軽くいなされながらも負けずに挑んでいく信雄は、実にいい役だったのではないかしら。

 小説と映画、物語の流れは同じだが、登場人物はかなり変わっている。たとえば、文吾という若い忍びが映画には出てなかった。小説では話を動かすキーパーソンで、物語の最後まで無門と関わるとびきり重要な役割なのに。もちろん映画は彼なしでも話は通るように改変されてるんだけど、ちょっと残念だったな。なぜなら私は小説を読んだとき、「無門=大野くん」に加えて、「文吾=手越くん(NEWS)」で脳内再生していたから。

 文吾は無門をライバル視している忍びで、戦で人を殺すことにワクワクしちゃうタイプ。あまり物事を深く考えず、罠にかかって危険な目に遭ったりもするけど、懲りずにまた調子に乗る。しかもやることが派手。明るさ・軽さと残虐さが素の状態で同居した忍びだ。実はこの文吾、のちの大泥棒・石川五右衛門なのである。

 石川五右衛門の生い立ちは明らかになってないんだけど、伊賀で百地三太夫の弟子だった抜け忍という説がある。それを上手く物語に取り入れてるわけ。この絶妙な設定が映画から消えちゃったのは惜しいので、ぜひ、小説は文吾をテゴで当て読みしてみていただきたい。小説のラストシーン(映画とはまったく異なる)では、無門と文吾がある状況で出会うんだけど、ここを大野くんとテゴで読むと、ちょっとぞくりとするよ。

 小説の登場人物が映像化の際にカットされるのはよくある話。そういうときこそジャニ読みの楽しさが発揮されるのだ。あなたなら、文吾は誰で読むかな?

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2017/08/02
第5回アンケートの受付は終了いたしました。
「石川五右衛門」を演じて欲しいジャニーズには1位が稲垣吾郎さん。2位は嵐の大野智さん、3位はNEWS手越祐也さん、4位は同票でTOKIOの松岡昌宏さん、香取慎吾さんでした。
アンケートの詳細は下記からご覧頂けます。
>> 第5回
多くの方のご参加をありがとうございました!
第6回は加藤シゲアキの第2作『閃光スクランブル』の主人公の「高橋巧」です。ご参加をお待ちしております!
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