大矢博子 ジャニ読みブックガイド
2017/08/30

岡田准一にしかできない新しい「石田三成像」 原作を読むと映画「関ヶ原」がさらに楽しめる![ジャニ読みブックガイド第8回]

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 君だけの色で駆け抜ける皆さん、こんにちは。このコラムではできるだけ幅広くジャニーズを扱っていきたいと思ってますが、連載8回目にして岡田准一、2度目の登場となってしまいました。だって大作「関ヶ原」だもの。実はこの映画と小説、岡田准一という俳優の〈これまで〉を知ってると、いっそう楽しめるのだ。


■岡田准一(V6)主演!「関ヶ原」、原作はこんな話

 8月26日に公開された映画「関ヶ原」(東宝)は、司馬遼太郎『関ヶ原』(新潮文庫・上中下巻)が原作。司馬遼太郎がこの作品を書き上げたのは1966年なので、もう半世紀も前のことになる。累計発行部数が620万部以上というとんでもないベストセラーだが、意外にも映画化は初めてだ。

 原作は、司馬遼太郎の回想から始まる。滋賀県のある寺で、まだ子どもだった司馬遼太郎が土地の老人から、秀吉と少年時代の石田三成の出会いについて聞いたという思い出話だ。驚いたのは映画も同じ場面から始まったこと。坊主頭の少年が老人から話を聞いている。ナレーションも、この少年が長じた「私」、つまり司馬遼太郎が語り手を務めているという体裁。ああ、この監督は本当にこの小説が好きなんだなあ。

 原作ではその後、石田三成がどういう人物かざっと説明され、秀吉の晩年へと移る。秀吉の死をきっかけに天下を狙う徳川家康と、豊臣を守ろうとする三成の対立が顕在化し、天下分け目の関ヶ原までどのようにふたりや他の武将たちが動いたのかが綴られるんだが、なんと関ヶ原当日の合戦は、下巻も半分以上過ぎてからようやく始まるのだ。つまり本書の6分の5は準備段階の話なのである。

 しかも中巻から下巻の序盤にかけては、家康と三成以外の全国の武将たちが、東につこうか西につこうか迷う様子が、その武将の来歴も含めて1人ずつ描かれるという構成。その間、家康も三成もあまり登場しない。これが原作と映画の最も大きな違いだ。映画は家康と三成を中心に描いているが、原作は司馬遼太郎がすべてを俯瞰して描いた、武将たちの群像劇なのである。合戦に至るまでが小説の眼目であり、合戦場面はその結果に過ぎないわけだ。

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イラスト・タテノカズヒロ

■映画で飛ばした部分を原作で補完

 でもそんな群像劇をいちいちやっていては映画も20時間くらい必要になる。そこで他の武将の話は小早川秀秋くらいで、あとは大部分がカットされた。オープニング以降はもう、飛ばす飛ばす。司馬遼太郎小説の魅力はその文体にあって、〈ものすごく物知りなおじさんが歴史の面白い話をゆっくり語ってきかせてくれる〉という感じなのだが、映画はとてもテンポがいい。どんどん進む。ざくざく進む。

 三成の性格を表し、家康との対立が世に知られるきっかけとなった「竹杖事件」も、平岳大演じる島左近(これがめちゃくちゃカッコイイ!)の口でさらりと説明されるだけ。松山ケンイチ演じる直江兼続と三成の作戦会議(岡田くんが怪しい笑顔で叫ぶ「符合した!」は原作にも登場するぞ)も、互いにセリフが被さり気味なくらいぐいぐい進む。

 もちろん話の流れはわかるし、テンポの速さがクライマックスに向けて物語を盛り上げていくのも確か。でもね、これはやっぱり原作を読んだ方が絶対楽しめるよ。各場面の理解度が段違いだと思う。もしも武将たちの行動背景や関係性がよくわからなかったら、原作を読もう。ぜんぶ説明されてるから。原作『関ヶ原』は、格好の映画解説本なのだ。

 もちろん原作と違う部分はある。有村架純演じる初芽の設定も違うし、忍者たちも出てこない(忍びは司馬遼太郎『戦雲の夢』での描写に近い)。何より大きな違いは、石田三成と小早川秀秋の描かれ方にある。原作の小早川秀秋は暗愚で凡庸で、最後までいいとこ無し。三成は武芸に疎く頭の固い官吏で、正論ばっかり言って人を責め立て、情をまったく理解しない。しかも関ヶ原の間じゅうずっと下痢してたくらい神経が細かい。

 50年前の小説が映画化される意味はここですよ、ここ。このふたりはその後の研究で、いろんな再評価がされてきた。それが反映され、彼らについては原作と造形が大きく変わった。それがこの映画のキモだ。
 岡田くんは若い頃に司馬遼太郎をほとんど読み、司馬作品と史実を照らし合わせることで歴史を追いかけたという。これはもう、ファンも照らし合わせながら読むしかないでしょ。

■岡田〈三成〉准一の違和感とその解消

 岡田くんが三成を演じると聞いたとき、はじめは違和感があった。従来の三成像は、武闘派ではなく官僚。これまでは運動のできないガリ勉みたいなイメージで、知性派の俳優が三成を演じることが多かった。
 でも岡田くん、めっちゃ武闘派じゃん! 小さな国くらい、岡田くんひとりで制圧できそうじゃん! 図書館戦争の堂上教官だよ? 家康を背後から攻めて落とすなんて朝飯前じゃないか、なあ?
 実際に合戦場面では、殺陣も乗馬もマニアックなくらいすごかった。っていうかむしろ抑え気味なほどだった。あ、ちなみに岡田くんが乗ってる馬は、大河ドラマ「軍師官兵衛」のときと同じ馬ですって。

 岡田准一の三成は、実はここにポイントがある。岡田くんは「(三成は)子どもの頃から武芸を習ってきたうえでの、職業軍人としての官僚なんです」(「小説現代」9月号)と語っている。実際、三成は賎ヶ岳では武功を挙げているのだ。

 武闘派・岡田准一が演じることで、三成のイメージが塗り替えられる。〈欠点は真っ直ぐすぎる性格だけ〉というのが強調されたのよ。自分は正しいはずなのに、なぜみんなついてきてくれないのかという三成の懊悩は、文武ともに優れた武将なのになぜ、ということで説得力が増した。岡田くんでないとできない、新しい三成像なのだ。

 それと、やっぱり思ってしまったのは、あんた、黒田官兵衛だったよね? ってこと。まあ、これはしょうがないよな? やっぱり官兵衛の印象は強烈だったからさ。捕らえられた三成に、和田正人演じる黒田長政が礼を持って接する場面なんて、「そりゃそうよねえ、お父さんだもんねえ」というメタな感想を持ってしまった。

 だが、そんなファンに思いがけないプレゼントが原作にはあるぞ。下巻の最後、エピローグのように綴られる章が、黒田官兵衛視点なのだ。しかも本書の官兵衛は、石田三成と自分は似ている、なんて考えるのである。もうね、脳内はどっちも岡田くんですよそりゃ似てるよ。しかも三成の恋人・初芽と官兵衛が会うというオマケつき。死に別れたふたりが再会できたみたいで、もうメタの花盛りさ。原作でこんな楽しみ方ができるのは、岡田担だけだぞ!

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2017/09/13
第8回アンケートの受付は終了いたしました。
嫌われ者だった石田三成を支え続けた親友、大谷吉継を演じて欲しいジャニーズには1位が堂本剛(KinKi Kids)さん。2位は稲垣吾郎さん、3位は櫻井翔(嵐)さんでした。
稲垣さん、香取さん、草彅さんは「ジャニ読みアンケート」では「殿堂入りジャニーズ」として、今後も投票いただけるようにいたします。

アンケートの詳細は下記からご覧頂けます。
>> 第8回
多くの方のご参加をありがとうございました!
第9回は、堂本剛(KinKi Kids)さん、松本潤(嵐)さんなど、これまで数々のジャニーズが演じてきた『金田一少年の事件簿』の金田一少年です。ご参加をお待ちしております!
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