大矢博子 ジャニ読みブックガイド
2017/09/13

佐藤勝利の中性的な魅力が爆発! 青春映画「ハルチカ」の原作は本格ミステリ[ジャニ読みブックガイド第9回]

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 まだ誰にも言ってない夢が心にある皆さん、こんにちは。今月2日に発売された映画「ハルチカ」のDVD、もう入手したかな? セクゾのしょりくん初主演映画だぞ。この連載を始めたとき、DVD発売のタイミングで絶対取り上げようと決めてたのがこの作品なのだ。

■佐藤勝利(Sexy Zone)主演!「ハルチカ」

 なぜこの作品を取り上げたかったかというと──。このコラムはジャニーズ目線で原作小説を紹介するのが趣旨なので、ここまで取り上げた映画・ドラマについては毎回、〈原作とここが同じ・ここが違う〉という話をしてきたわけよ。ところがこの作品に限って言えば、その構成が通用しない。なぜなら〈原作とここもあそこも全部違う〉から。はっきり言って別物。
 ──と、映画が公開されたときからずっと指摘されてきた。でもね、筋金入りの原作ファンとして言わせてもらおう。確かに一見、まったく別の話になっている。だけどこれ、実は〈語られなかったもうひとつのハルチカ〉なのだ。

 どっちから行こうかな。うん、映画から行こう。映画「ハルチカ」(2017年・KADOAKWA)は、主人公のチカちゃんが廃部寸前の吹奏楽部を再建すべく部員集めに奔走する前半と、そうして集まったメンバーが顧問の草壁先生のもとで大会に挑戦する後半という2部構成。佐藤勝利くん演じるハルタはチカの幼馴染で、吹奏楽部のホルン担当としてチカを陰に日向にサポートする。ふたりの間にはちょこっとばかりラブの萌芽も見える。だけど初心者のチカは演奏の足を引っ張ってばかり。さて、大会の結果は──?

 翻って原作の初野晴『退出ゲーム』(角川文庫)に始まる「ハルチカ」シリーズはこうだ。廃部寸前の吹奏楽部立て直しに奔走するチカとハルタ。経験者を勧誘するが、皆、あいまいな答えで入部を断る。どうやらそれぞれ悩みを抱えているらしい。そこでハルタの名推理とチカの元気で彼らの悩みを解決し、部員をひとりずつ増やしていくという連作短編集。ふたりの目標は、かつて音楽界の寵児と言われた顧問の草壁先生をもう一度晴れ舞台に立たせること。実はチカとハルタは、草壁先生を巡る恋のライバルでもあるのだ──。

 つまり映画は青春部活モノ、小説は謎解きミステリなのである。原作には、吹奏楽部の演奏場面はほとんど出てこない。練習シーンがほんの少しだけあるが、それも練習が事件や謎解きのきっかけになる場合に限られる。大会の場面でも演奏自体はまったく描かれず、その前後や会場で起きた事件の謎を解くミステリだ。吹奏楽の情報は満載だが、決して〈努力と涙の部活小説〉ではないのである。


イラスト・タテノカズヒロ

■ポップな文体とシビアなテーマが融合する原作

 といってもまったく原作ネタがないわけではない。映画前半、クラリネット奏者の芹澤さんとパーカッションのカイユが加入するくだりは、シリーズ第2作『初恋ソムリエ』(私が文庫解説書いてますんでヨロシク)所収の「スプリングラフィ」「周波数は77.4MHz」の2作が元になっている。
 もしあなたが原作を未読なら、まずはこの2編を読んでほしい。「ハルチカ」シリーズの粋の詰まった2作だ。その粋とは何か──ひとつは語り手チカによる、ツッコミに溢れたポップでファンキーでラノベテイストの爆笑文体。もうひとつはハルタとチカの、ひいては作者の初野晴の、社会的弱者に向ける眼である。

 原作「ハルチカ」シリーズは1冊に4~5編の短編が収められているが、その大部分に共通するテーマがある。病気、障碍、老い、死、性的マイノリティ、差別。チカのユーモラスでテンポのいい語り口調に大笑いしてると、いつの間にか重いテーマが心にズンとのしかかる。ハルタがいかに明晰でも、チカがいかに能天気でも、高校生には抱えきれない問題が大半だ。そこで大人の草壁先生が手を差し伸べる。原作「ハルチカ」シリーズはそんな話なのだ。

 その典型が「周波数は77.4MHz」だ。部費が足りないという吹奏楽部に、生徒会長がある取引を持ちかける。物語はそこから地学部の謎に切り込み、市内のミニFMを絡めて思わぬ真相に着地する。映画では吹奏楽部をやめたカイユを説得に行くという流れだったが、原作ではそこにたどり着くまでに多くの伏線が仕込まれ、幾重もの謎解きがあり、笑いと切なさの交差する完成された物語になっている。

 と、ここまでで充分、映画と原作はぜんぜん別物、というのがわかっていただけたと思う。でもって、ここでもう一度言おう。ぜんぜん別物に見えるけど、この映画は〈語られなかったもうひとつのハルチカ〉なんですよ、と。

■あらためて「ハルチカ」をジャニ読みする

 原作を、第3作『空想オルガン』以降も読み続けてる人なら気付いてるだろうが、この物語は、大人になったチカが高校時代を回想している、という設定だ。そして思い出話をするにあたり、チカはこんなふうに言う。

「わたしには決めていることがある。/大人になって高校時代のことを話すときがきたら、苦労話は決して口にしないと。/その代わり、どんなに辛かったときでも、みんなと素敵な寄り道ができたことを伝えたい。どんなに厳しい環境でも、わざわざ遠まわりして、楽しそうに生きたことを教えてあげたい」(『千年ジュリエット』より)

 原作のチカの語りはとにかく面白くておかしくて、とっても元気で読んでるこっちまでニコニコしちゃうのだが、実は苦労もあったのだ。でもそれは口にしないと決めている。だから出てこない。じゃあチカが口にしてない苦労話って何?
 ──それが、あの映画の後半なんじゃないだろうか。だから私は、あの映画は〈語られなかったもうひとつのハルチカ〉だと思うのだ。

 そこで佐藤勝利くんである。配役が発表されたとき、「うおおお、なんて適役なんだ!」と手を叩いたものだ。まず、ハルタのルックスについて原作にはこうある。

「童顔で背が低いことを気にしているが、女のわたしが心から切望したパーツをすべて持って生まれている。さらさらの髪にきめ細かい白い肌、二重まぶたに長い睫毛。中性的な顔立ちのハルタは女子から可愛いといわれると不機嫌になり、無理して硬派な一面を見せようとするが、それがかえって隠れファンを増殖させる結果となっている」(『退出ゲーム』より)

 しょりくんじゃないか! 完璧にしょりくんじゃないか!
 性格や物言いは原作と変わっていたけど、むしろ私は映画のハルタより、博識で策略家、時々毒舌、でも同性の草壁先生に恋するシャイな少年でもある原作のハルタの方が、しょりくんで読むとハマると思ったね。ぜひしょり担さんは原作を読んでください。
 ちなみに私の他のジャニ読みは、カイユが岡本圭人くん(Hey! Say! JUMP)、草壁先生が稲垣吾郎ちゃん、他校の熱血ゴリラ先生が長瀬智也(TOKIO)だ。こちらも合わせてご確認のほどを。
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2017/09/27
第9回アンケートの受付は終了いたしました。
『金田一少年の事件簿』の金田一少年を演じて欲しいジャニーズには1位が堂本剛(KinKi Kids)さん。2位は中居正広さん、3位は佐藤勝利(Sexy Zone)さんでした。
アンケートの詳細は下記からご覧頂けます。
>> 第9回
多くの方のご参加をありがとうございました!
第10回は、堂本剛(KinKi Kids)さん、松本潤(嵐)さんなど、これまで数々のジャニーズが演じてきた『金田一少年の事件簿』の金田一少年です。ご参加をお待ちしております!
>> アンケート このヒーローにはどのジャニーズ?【10】

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