大矢博子 ジャニ読みブックガイド
2017/09/27

山田涼介が「普通」を演じるこのキセキ!「ナミヤ雑貨店の奇蹟」は脚色が秀逸[ジャニ読みブックガイド第10回]

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 もう“キミチュウドク”症状が深刻そうな皆さん、こんにちは。JUMPの三大ドームツアーが発表され、とびっこさんたちもテンション上がりまくりのことでしょう。私も地元ナゴヤドームに圭人くんが来るかと思うとトキメキメリーゴーランドです。デジチケにはなかなか慣れないけど、どうかトラブルなく、皆がライブを楽しめますように。

■山田涼介(Hey! Say! JUMP)主演!「ナミヤ雑貨店の奇蹟」

 山田くんが主演した映画「ナミヤ雑貨店の奇蹟」(松竹)は、国民的作家・東野圭吾の同名小説『ナミヤ雑貨店の奇蹟』(角川文庫)が原作。

 物語の始まりは、何か悪事を働いた直後らしい若者3人組──敦也、翔太、幸平──が逃げている場面。とりあえず一時の隠れ場所として、廃屋になった空き店舗に入り込む。そこは以前、店主が悩み相談の手紙に答えることで有名だったナミヤ雑貨店だった。ところが3人が屋内に落ち着いたとき、シャッターの郵便受けから1通の手紙が落ちてくる。それは時空を超えて過去から届いた悩みの相談だった……。

 ということで3人は次々舞い込む過去からの相談に返事を書くことになる。書いた返事を店の脇の牛乳箱に入れると、それが消え、すぐさまその返事がシャッターから差し込まれるという時空歪みまくりの文通が始まるわけだが、それが実は思わぬ形でつながっていくというファンタジックな物語だ。

 原作に登場する悩み相談は、3人組が答えたもの3件、過去の章でナミヤ雑貨店の店主が答えたものが2件。しかし映画では「恋人かオリンピックか悩む女性アスリート」と「ビートルズが好きな夜逃げ家族の息子」の2件がカットされている。他に細々した設定も省略されているが、エピソードのセレクトとその繋ぎ方が上手いので、「原作と違う」感じはまったくしない。むしろ、かなりカットされているにもかかわらず「原作通りだ!」と感じるほど。

 逆に、原作にはないシーンが幾つか付け加えられていた。これが良かったのだ! なぜなら原作を読んだ時「えー、そこもうちょっと詳しく見せてよ」と思った、まさにその箇所が詳しく描かれていたんだもの。

johnnys_0927_1イラスト・タテノカズヒロ

■まさにそこが見たかった! 映画のナイス脚色

 ひとつは、劇中歌。原作では雑貨店の前で「再生」という曲を魚屋ミュージシャンが演奏し、のちに3人組とも関わりの深い女性歌手が歌う。どんな曲なのか、こればっかりは小説ではわからない。それが山下達郎さんによる「REBORN」が映画に使われることで「これかあ!」と腑に落ちるのだ。
 これを劇中で歌うのは門脇麦さん演じるセリという歌手なんだが、セリの子供時代を演じた鈴木梨央ちゃんの絶叫は素晴らしかったよ……。

 ちなみに魚屋ミュージシャンの両親は小林薫さんと根岸季衣さんという、「ふぞろいの林檎たち」世代を直撃する配役。思わず佐々木すみ江さんや中井貴一さんを探したよね。いなかったけどね。わかる人だけわかって下さい。

 そしてもうひとつ、「そうそう、それが見たかったんだよ!」と思わずガッツポーズしたのが、ラストシーンだ。原作は、3人組が過去に向けて出した白紙の手紙に返事が来て、その返事を3人で読むところで終わっている。そのあとどうなったかが知りたいんだよ、とジリジリしたものだった。それが! 映画で、ちゃんとその後を見せてくれたのだ。

 手紙を読んだ3人(映画では敦也ひとり)がそれからどうしたか。3人と尾野真千子さんが視線を交わし合う場面の、無言なのにものすごく多くの言葉が飛び交ってる雰囲気といったら! そしてエンディングでは、3人と、関係者たちの将来が映像で紹介される。これがすごく嬉しい。

 こういう演出は、もしかしたら人によっては余計なお世話に見えるかもしれない。けれど、東野圭吾という作家は総じて「すべては書かない、あとは読者の想像に任せます」という終わり方をすることが多く、幸せな将来を想像したとしてもそれは自分の想像でしかないわけで。その想像に、ちゃんと「それでいいんだよ、幸せになったよ」ってお墨付きをもらえた気がしたのだ。
 だから作品を先に読んだ人は、映画を見終わった後で温かく清々しい気持ちになれる。映画の後で原作を読めば、ラストシーンのその後を思い浮かべる楽しみが生まれる。どちらの場合も、映画と原作が補い合うステキな体験ができるはずだ。

■山田くんの〈普通の青年〉の涙に痺れる

 そしてこのラストシーンは、山田涼介くんの見せ場でもある。

 過去からの返事が届いたとき、映画では翔太と幸平はある場所に向かってもう駆け出しており、その手紙を読むのは山田くん演じる敦也ひとりだけだ。最初は不審顔で読み始めるんだけど、次第に表情が変わる。そして耐えきれないように涙をこぼす。この、絞り出すように泣く演技が圧巻!

 ここでちょっと思い出して欲しい。山田くんがこれまで演じた原作付き作品は漫画が多かった。金田一少年しかり、暗殺教室しかり、探偵学園Qしかり、1ポンドの福音しかり。小説原作のものは「グラスホッパー」だけで、けれどこれもかなり現実離れした殺し屋の役だった。つまり、妙にキャラの立った役が多いわけだ。

 翻ってこの映画では、敦也はごく普通のリアルな青年だ。児童養護施設出身で、過去には辛い思いもしてきてるけど、等身大の若者といっていい。3人組のリーダー格、けっこう短気の現実主義者。左目で変なものが見えるわけでもなく、じっちゃんの名にかけたりもしない、ある意味、キャラの立ってない普通の青年。これ、かなり珍しい。っていうか初めてでは?

 「普通」を演じる難しさは山田くん本人も感じていたようで、インタビューなどでもそこに言及している。普通の人間だから主張しすぎない、引く演技を心がけたそうだ。
 実際、原作でも敦也は別に「主役」ではない。むしろ手紙を出した過去の人々のオムニバス小説といった構成だ。映画でも、主役というには山田くんが出ている時間は決して多くない。でもその少ない時間に、しっかり印象を残し、過去と現在を結びつける大事な役割を果たしている。
 山田涼介が初めて演じた〈普通の青年〉に、ぜひ注目願いたい。

 蛇足:「ナミヤ雑貨店の奇蹟」のメインロケ地・大分県豊後高田市は私の実家のある町でして、自分が利用していた商店街や毎日通った橋に山田くんがいるという、いや何だそれマジか、夢か、という体験をしました。えへへ。ちなみに知念くんも「坂道のアポロン」で豊後高田に来てるんだよん。

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2017/10/11
第10回アンケートの受付は終了いたしました。
ジャック・フィニィの短編「愛の手紙」決して結ばれない相手に恋をしてしまった青年・ジェイクを演じて欲しいジャニーズには1位が相葉雅紀(嵐)さん。2位は同数で二宮和也(嵐)さん、中丸雄一(KAT-TUN)さん、マリウス葉(Sexy Zone)さんでした。
アンケートの詳細は下記からご覧頂けます。
>> 第10回
多くの方のご参加をありがとうございました!
第11回は、東野圭吾のデビュー作『放課後』の“不器用”な男性教師、前島先生です。ご参加をお待ちしております!
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