大矢博子 ジャニ読みブックガイド
2022/03/23

伊野尾慧主演・神宮寺勇太出演「准教授・高槻彰良の推察」ドラマオリジナルパートに入ったシーズン2 未完の原作は二人の「わちゃわちゃ」がより楽しめる!

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 難しい課題、解らない答え、探し続けたい皆さんこんにちは。ジャニーズ出演ドラマ/映画の原作小説を紹介するこのコラム、今回は昨年春に放送されたこの怪奇&ミステリドラマのSeason2だ!

■伊野尾慧(Hey!Say!JUMP)・主演、神宮寺勇太(King&Prince)・出演!「准教授・高槻彰良の推察 Season2」(2022年、東海テレビ・WOWOW)

 うおおお、話が変わってきたぞお。てか小池徹平、何者!? とぞわぞわさせてくれるSeason2が地上波に登場だ。原作は澤村御影の同名小説『准教授・高槻彰良の推察』(角川文庫)。3月23日に第7巻が刊行された──が、この原稿を書いているのはその前なので、ここでは6巻+番外編1冊までを下敷きにしていることをお断りしておく。

 Season1が放送されさときにもこのコラムで扱ったので重複になるが、まずはあらすじから。原作で語り手を務めるのは大学生の深町尚哉。子どもの頃に死者の祭りに迷い込み、生きて帰る代償として「他人が嘘をつくとその声が不快に歪んで聞こえる」という力を持たされてしまう。そのため他人が信じられず、孤独な日々を送っていた。

 だが大学で都市伝説や怪談を研究している民俗学の准教授・高槻彰良は、そんな尚哉を気味悪がることもなく、「いつか、君の身に起きた出来事について、一緒に解き明かそう」と語りかける。以降、尚哉は助手として自分の力を高槻のフィールドワークに役立てるようになるのだが、実は高槻にも、怪異にまつわる秘密があったのだ──。

 Season1は怪異が絡んでいるような事件が起き、それを尚哉の力と高槻の推理力で怪異などでないと解き明かす、原作と同じ一話完結のミステリだった。原作のエピソードを複数組み合わせたり内容をアレンジしたりしながらも、大枠だけ見れば原作の流れに沿っていたと言っていい。そして第7回で尚哉と同じ過去と能力を持つ遠山が登場し(原作では4巻第1章)、最終回で尚哉はあの祭りに向き合うことになる(5巻第2章)。つまりSeason1は尚哉の変化と彼が過去を乗り越える様子を描くというのがひとつの軸になっていたわけだ。

 だがその一方で、高槻の事情は小出しだった。Season1で明かされたのは、高槻は子どもの頃に行方不明になっていた時期があること、発見されたときには背中にまるで羽をもがれたような大きな傷が残っていたこと、そしてその後、鳥が怖くなったり記憶力が増したり目の色が変わったりという変化があったことくらい。Season2ではいよいよその高槻の秘密に迫っていくようだ。なるほど、ドラマを2部構成にしたのはこのためか。

■原作はまだ話の途中、ドラマで一足先に真相がわかるのか?


イラスト・タテノカズヒロ

 Season1はいろいろ改変はされていたとはいえ、基本的には原作のエピソードを下敷きにしていた。Season2も第1回のエピソードは原作からとられている。元になったのは2巻第3章「奇跡の子供」。小学校の遠足のバスが崖から転落し、運転手も生徒たちも犠牲になった中、ひとりだけ無傷で助かった少女が神様として崇められるという話だ。

 この回の嬉しいサプライズは何といってもハセジュン! 高槻たちを事故現場に案内する目撃者として登場した。バードウォッチャーの出立ちだったので「文豪少年」の「雪女」の回を思い出してちょっと期待したが、特に猟奇殺人犯というわけでもなく普通の目撃者だったよ(そりゃそうだ)。「奇跡の子供」の顛末も原作通り。だが同時に話の流れは原作を大きく逸れ始める。原作にはまったく登場しない、小池徹平演じる寺内の登場だ。

 第2回の百物語のエピソードは原作5巻第1章「百物語の夜」から。しかし大学内で百物語をするという設定だけで、そこからの展開は原作を離れたドラマオリジナルである。原作では百物語の終了後にとある「怪異」が起き、その真相を高槻と尚哉が探るといういつものパターンだが、ドラマではそのくだりがごっそり削除された。代わりに加えられたのが関係者の神隠し、そして寺内の思惑だ。

 じゃあ第2回以降は原作まったく関係なし? 実はそうじゃないんだな。百物語で院生の瑠衣子が教官とのある思い出を語る。それは原作5巻のextraの一編「マシュマロココアの王子様」のエピソードなのだ。

 また、高槻の回想シーンで子どもの頃に「キリシマさん」という女性から投資の相談を受ける場面があったが、この女性は原作3巻第2章「鬼を祀る家」に出てくる霧島さんと思われる。原作には投資なんてヌルい話じゃなくて、けっこう辛辣なエピソードが出てくるぞ。また、完全ドラマオリジナルキャラの寺内だが、部分的には原作6巻第2章「肌に宿る顔」のある人物を想起させる。これはドラマになっていない回なので、ぜひ原作で確認を。

 とまあ、ちょいちょい原作に近い話が顔を出すとはいうものの、やはりSeason2は基本的にドラマオリジナルの展開。ということは、まだ原作では明かされていない高槻の過去について、ドラマなりの「結末」が用意されていることになる。それが原作の今後と同じなのかどうかはわからないが、土曜日を楽しみに待ちたい。
 

■伊野尾&神宮寺のイメージがぴったりの原作小説

 さて、Season2がこういう流れで来た以上、どうやら描かれずに終わりそうな原作エピソードが当然出てくるわけで。そんな中から伊野尾担・神宮寺担の皆さんにぜひ読んでいただきたい原作エピを紹介しよう。

 まず伊野尾担には原作4巻のextra「それはかつての日の話2」を。これは失踪から戻った後、結局家庭に馴染めなかった高槻が、中学時代をロンドンの叔父の家で過ごしたときの話だ。中学生なので今の伊野尾ちゃんで脳内再生するのはキビしいかもだがJr.時代を思い出せばOK! この過去編の高槻が──いや、アキラちゃんがめちゃくちゃキュートで健気なのだ。王子様ここにあり……!

 一方、神宮寺担にはシリーズ番外編である『准教授・高槻彰良の推察Ex』から「俺の友達の地味メガネくん」を。尚哉の数少ない友人である難波くんの視点から描かれたスピンオフである。ある女性が尚哉に告白して断られた理由を探るため尚哉を飲みに誘う話。彼女が尚哉を好きになったきっかけも実にハンサムエピソードだし、嘘をつかない難波くんの「尚哉評」が楽しめる一編だ。

 実はSeason1から思っていたのだけれど、伊野尾&神宮寺というキャスティングは、ドラマより原作に似合っているのだ。って、ちょっと何言ってるかわからない日本語だな。

 たとえば高槻は原作では「大きな二重の目に、綺麗に通った鼻筋。薄い唇には親しみのわく笑みが浮かんでいる。端整なうえに優しげな雰囲気のその顔は、『甘いマスク』という小説でよく見かけるフレーズにいかにもふさわしいもののように思えた。やや茶色みがかった髪は、染めているのか地毛なのかわからない」と説明されている。また尚哉は女子学生から、はじめは地味なメガネの印象しかなかったが「よーく顔見てみたら、意外とあいつ顔綺麗」「綺麗っていうか可愛い? 眼鏡取って髪型変えて服替えたら、絶対そこそこのレベルいくって」と評される。

 そこそこのレベルどころかメガネとって髪型変えて服替えたらキンプリだけどな! というツッコミはさておき、ふたりの外見はまさに原作イメージにぴったり。だがそれだけじゃない。原作の高槻はドラマよりずっとハジけていてお茶目でちょっぴりドジっ子なところもあって、機嫌のいいゴールデンレトリーバーみたいと言われたりする。つまり可愛い。原作の尚哉はドラマよりずっとフランクでツッコみも冴えてて、人当たりが良く、困っている人を放っておけない。つまり誠実。

 原作を読んでると感じるのだ。ドラマより原作の方が「ふたりっぽい」のよ。ドラマはシリアス方向の改変がされているが、原作にはハジける高槻に冷静にツッコむ尚哉だとか、マイペースな高槻に振り回されつつもそれがちょっと嬉しい尚哉とか、べそかいて高槻に慰められる尚哉だとか、その逆バージョンだとか、ふたりのわちゃわちゃがドラマの50倍くらいあるので、これはもうホントに、原作読んで! 最新刊も出たばかりだぞ!

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