大矢博子 ジャニ読みブックガイド
2018/06/06

生田斗真主演「友罪」で描かれたのは「罪との向き合い方」原作にあるもう一つの要素にも注目

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 思い出した声の温もりに振り返れば息をする皆さん、こんにちは。別グループの歌ですみません。だって生田斗真回なんですもの持ち歌がないんですものFOUR TOPSの「波」はかざぽん回で使っちゃったんですもの。ということでなぜ斗真回にこの歌なのかは、ファンの皆さんならお分かりかと。

■生田斗真・主演!「友罪」

 生田斗真・瑛太のW主演で話題の映画「友罪」(GAGA)、原作は薬丸岳の同名小説『友罪』(集英社文庫)だ。薬丸岳は2005年に『天使のナイフ』(講談社文庫)で江戸川乱歩賞を受賞してデビューして以来、少年犯罪や社会的弱者が巻き込まれる犯罪を描いてきた。『友罪』は著者初の、謎解きのない非ミステリである。

 ジャーナリストの夢に行き詰まった益田は、当座の生活のため寮のある町工場で働き始めた。彼と同じ時期に入った鈴木は不愛想でまったく周りに馴染もうとしないが、益田とは少しずつ打ち解けていく。ところがあるきっかけで益田は、鈴木が17年前に世間を震撼させた児童連続殺人事件の犯人・少年Aではないのかと疑い始めた……。

 というのが原作・映画の両方に共通する設定だ。原作では同じ町工場で働く先輩社員の山内が、映画では主人公たちに直接関わることのないタクシードライバーになっているというオリジナルの設定とエピソードが加えられているが、基本的には原作通りに話は進む。

 14歳という年齢で猟奇殺人を犯して医療少年院に入っていた鈴木だけでなく、益田も、山内も、鈴木とつきあう美代子(原作では町工場の事務員、映画では別の会社に勤務)も、医療少年院で鈴木の担当だった白石も、自分の中に〈罪〉を抱えて生きている人物だ。彼らの罪は法で裁かれるものではないが、逃れられないものを背負っているという点では同じ。5人それぞれ異なる罪との向き合い方を通し、背負ったまま生きていくということの辛さと重さがずしんと胸に響く作品である。だが、映画と原作には、ひとつ大きな違いがあった。


イラスト・タテノカズヒロ

■原作を読めば物語がより身近になる

 映画では、罪を背負った者やその関係者の心理、贖罪に焦点が当てられている。ただ、実は原作を読んで私が最も印象に残ったのは、罪を背負った彼ら自身の描写ではなかった。映画ではカットされていたり、短い表現で終わっていたりして前面には出てこなかったが、原作では当事者以外の〈周囲の反応〉がつぶさに描かれるのである。具体的に言うなら、犯罪者やその関係者に向けての忌避感と、下衆な興味だ。

 たとえば原作では、鈴木が元犯罪者だということを知った益田は、その瞬間から、それまでと同じように鈴木と付き合えなくなる。避けてしまう。ジャーナリストの道に戻れるかもという功名心から彼のことを暴露する記事を書き雑誌社に持ち込むが、出版社が食いついてくると今度は急に怖くなり、鈴木を守ろうとする。映画でもその戸惑いは表現されていたが、原作はより強烈に、エゴや偏見による揺らぎが益田を苦しめるのだ。

 また、同じ寮の仲間も、鈴木のことがわかってから興味本位で面白がる。彼の残していったものを出版社に売り込もうなんていう話も出る。あるいは、美代子の過去と現在がネットで晒され、不特定多数からの執拗な悪戯や嫌がらせが始まる。彼女の過去を知った会社の社長夫妻は、親切めかして彼女を解雇しようとする。鈴木はどこに逃げようとネットが追って来る。雑誌の編集部は手前勝手な「正義」を振りかざして、よりスキャンダラスな記事に仕上げる。

 映画ではカットされていたこれらの描写。読者の中に、鈴木や益田、山内、美代子のような過去を背負っている人は、多くはないかもしれない。けれど、過去のある人に対して偏見で避けたり中傷したり、雑誌やワイドショーを見て興味本位で面白がったり、ネットに心無い言葉を書き込んだりする人は、大勢いる。すぐそこにいる。だからこの物語は怖いのだ。自分の罪に向き合う人を描きながら、そういう人たちに対する想像力を決定的に欠いている〈一般の人々〉こそ、この原作小説は断罪しているように思えるのである。

 映画を見て、罪を背負う人々の生き方に心を揺さぶられたら、ぜひ原作を読んでほしい。彼らを生きづらくさせているのは、私たちなのかもしれないのだから。

■〈受け身の芝居〉に徹する生田斗真の表情に注目

 ジャニーズに入った小学校6年生の時から俳優業一本でやってきた生田斗真。今や毎年のように主演映画が封切られるなど、大活躍を続けている。かざぽんやはせじゅんなどCDデビューなしで役者だけやるメンバーは他にもいるが、その草分けが斗真だ。

 ただ、テレビや舞台のキャリアに比べ、銀幕デビューは遅かった。初めての映画が「人間失格」(2010年、角川映画)で、主役の大庭葉蔵。退廃的で美しいダメ男である。そこから光源氏だの感情のない殺人鬼だの潜入捜査官だの、脳の映像を見たり犯罪予告をしたり編み物したり……まさに七変化とでも言うべき幅広い役柄をこなしてきたが、振り切れた設定や役柄が多く、〈普通の人〉の役はあまりない。今回の益田役は、斗真には珍しい〈普通の人〉だ。

 もうひとつ珍しいのは、斗真の〈受け身の芝居〉である。一筋縄ではいかないキャラクター設定で物語を動かす役が多かった過去作に比べ、今回は相手の行動を見てなにがしかの反応を返す、その反応の連続で益田の芝居は成り立っている。そこで注目願いたいのが、斗真の表情だ。鈴木の言動ひとつひとつに返す表情、そして鈴木の過去を知った後に彼と相対するときの表情。感情を爆発させたときの表情。私生活でも仲がいいという瑛太との化学反応をぜひ味わっていただきたい。

 特に原作にはない、映画オリジナルのラストシーンのふたりの表情は、いつまでも胸に残るほど素晴らしい。あのふたりの表情は、答えの出ないこの物語に対して生田斗真・瑛太という俳優がそれぞれ出した彼らなりの〈答え〉なのだろう。

 なお、ファンとしては斗真のカラオケ場面にも注目だ! 酔っ払ってカラオケを歌う普通の人の芝居、つまりは、ヘタに歌う芝居が見られるぞ。音程をはずす斗真が妙におかしいのだ。重い物語の中で、唯一ホッとする場面である(ただしその後で突き落とされるんだけどな!)。
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2017/06/20
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大矢博子
書評家。著書に「読み出したら止まらない!女子ミステリーマストリード100」など。小学生でフォーリーブスにハマったのを機に、ジャニーズを見つめ続けて40年。現在は嵐のニノ担。

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