大矢博子 ジャニ読みブックガイド
2018/10/24

タッキー&翼 大河ドラマ「元禄繚乱」で親友となり仇となった2人の顛末に涙

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 鏡に写した月の光揺れる皆さん、こんにちは。ジャニーズ出演ドラマ/映画の原作小説を紹介するこのコラム、新作の合間には何かしら話題のジャニーズの旧作を紹介しているわけですが、まさかこんな理由でふたりを取り上げることになるとは……。けれど振り返るには今しかない、ってことで今回と次回、2度にわたってタッキー&翼が共演した大河ドラマとその原作を紹介します。まずは、これだ。

■今井翼・滝沢秀明・東山紀之(少年隊)・赤坂晃出演!「元禄繚乱」

 出演者名を並べただけでクラクラしたわ。なんて豪華な!

 1999年のNHK大河ドラマ「元禄繚乱」は、舟橋聖一『新・忠臣蔵』(文春文庫他)を原作にした赤穂事件もの。元禄14年(1701年)、播磨赤穂藩主・浅野内匠頭が江戸城内にて突如抜刀、高家旗本の吉良上野介に斬りかかるという事件が起きた。幕府は浅野に即日切腹を申しつけ、赤穂浅野家は断絶。一方、吉良はお咎めなし。それを知った浅野家家臣は殿の無念を晴らすべく、家老・大石内蔵助を中心に1年10ヶ月の準備期間を経て、翌年12月14日に浪士47名が吉良邸に討ち入る。本懐を遂げたのち、幕府の沙汰で全員切腹となった──というのが赤穂事件の顛末だ。

 あまりに有名な話だけれど、わかっていないことも多い(浅野が吉良に斬りつけた理由や、処分が不平等だった理由など)上に、後世の芝居や講談の脚色と史実が混同されがちだ。昭和30年代に執筆された舟橋聖一『新・忠臣蔵』は当時の新史料をベースに、俗説と史実をきっちり分け、赤穂事件を「感動的な仇討ち」ではなく「幕府に対する政道批判」として描いた新機軸だった。

 今にして思えば、まずヒガシと晃の配役が絶妙だ。完璧主義・理想主義で家臣から慕われていた藩主・浅野内匠頭をヒガシが、その弟でやや思慮が浅く、問題を起こしては家臣をハラハラさせる浅野大学を晃が演じるって、え、ちょっと待って、何そのどっかで見て来たような関係。NHKには未来を見通すジャニオタがいたの? いや、いたはずだ。それはタキツバの配役により現れている。

 Jr.のトップとしてセットで括られることは多かったが、まだタキツバ結成前だったふたり。そのふたりを、NHKは対(つい)で使った。赤穂四十七士のひとり・矢頭右衛門七に翼を、仇討ち相手の孫にして吉良家の新当主・吉良義周にタッキーを配し、互いが仇であることを知らずに出会って友人になる、という原作にはない設定を用意したのだ。神か。これ考えたNHK、神か、と当時は拝んだものよ。


イラスト・タテノカズヒロ

■翼が演じた右衛門七は四十七士きっての美少年!

 矢頭右衛門七(ドラマでは「えもしち」だが原作には「よもひさ」とルビが振られている)は、浅野内匠頭切腹時はまだ元服前だった。だが父親が病死、父の遺言として仇討ちに参加する。数えで17歳。四十七士の中では2番目に若い少年だった。ちなみに右衛門七を演じた時の翼も17歳である。いやあ、若い! 可愛い! タッキーも17歳で、大御所たちの中、ふたりとも慣れない時代劇の所作や台詞回しに一生懸命なのが画面から伝わってくるよ。

 右衛門七の最初の見せ場は第38回「神文返し」の回。原作では文春文庫版第5巻「雪の下」の章だ。あまりに若いのでメンバーからはずそうとする内蔵助に、父の遺言を叶えたいと直訴する。そして自分が江戸に下るにあたり、母と妹を親戚に預けるべく一緒に旅をするのだが、女性の旅には「女手形」が必要だということを知らず、泣く泣く引き返すのだ。誰か教えてやれよ。なおこのとき、右衛門七の妹を演じたのが14歳の宮崎あおいさん。他に、側用人・柳沢吉保の息子として、こちらも10代の高橋一生さんが出演している。みんな幼くて可愛いぞ。

 原作によれば右衛門七は「頗(すこぶ)る美貌」だそうで、ドラマではカットされた原作の名場面がある。四十七士が討ち入りを終えて泉岳寺に入ったときのこと。泉岳寺の僧たちの間で「浪士の中に女が混じっている」という噂が立った。右衛門七の美貌を女性と見間違えたのだ。
 男だとわかってからも僧たちは、「美少年なら、いっそうお手のものだ」「こりゃ、たまりませぬわ」と右衛門七に釘付け。汗をかいた右衛門七が片肌を脱いだときなど刺激に耐えられず叫び声が挙がった、とある。お坊さんたち何やってんの……。だが気持ちはわかる、わかるぞ。このくだり、文春文庫版第7巻「白明話録」の章でご確認あれ。

 実は矢頭右衛門七という役は、古いジャニオタにとっては格別の思い入れがある。同じ赤穂事件を扱った1975年の大河ドラマ「元禄太平記」では元ジャニーズJr.の小坂まさるが、1982年の「峠の群像」ではヨッちゃんこと野村義男が、この右衛門七を演じているのだ。四十七士きっての美少年は、マチャルからヨッちゃんへ、ヨッちゃんから翼へと引き継がれたのである。

■きらびやかなタッキーとワイルドな翼の対決

 一方、タッキーが演じた吉良義周の方はと言えば。右衛門七にくらべ、原作での義周の出番は多くない。吉良家に養子に入ったばかりにとばっちりを食らったお坊ちゃん、という役どころだ。「わしを敬え!」とうるさい上野介のことを内心では「おじいちゃん面倒くさい……」と思いつつ、浪士たちの討ち入りには長刀(なぎなた)を持って奮戦、大怪我を負うが一命を取り留める。

 原作では長刀だったがドラマでは得物は刀に変わっていた。そしてここが原作とドラマの大きな違いなのだが、原作では義周と戦ったのは不破数右衛門なのに対し、ドラマではもちろん翼演じる右衛門七だ。義周が身分を隠して通っていた町道場で右衛門七と知り合い、同世代ということで意気投合する。討ち入り間近、道場を今日で辞めるといった右衛門七を、義周は自宅に誘った。それが仇の家だと知った右衛門七の動揺たるや。

 旗本の若君らしい豪奢な着物に着替えて上座に座るタッキーと、古い質素な着物ながら剣の腕では負けない翼。主君の仇だから、父の遺言だからと、「友を斬る」ことを懸命に自分に納得させる右衛門七と、何も知らずに右衛門七に好意を抱き「浪人なら我が家に士官してはどうか」と誘う義周。タキツバの個性がそのまま画面に出ていた。よくぞこのふたりにこの役を、この設定を振ってくれた。

 右衛門七は義周と対峙し、気絶させる。とどめは刺さなかった。刺せるのに、刺さなかった。そして一言「死ぬなよ」と声をかけて吉良邸を去る。遠からず切腹することになる右衛門七が、友に告げた「死ぬなよ」にはどんな思いが込められていたのか。右衛門七は義周に何を託したのか。この場面を今見返すと、現実に重なって仕方ない。この後、回復した義周は吉良家リーダーとしての責任を一身に背負うことになる。

 右衛門七と義周の対決はフィクションだけど、その後の運命は原作通りだ。ヒガシと晃の関係、タキツバの関係。まさか60年も前の原作小説を、今ジャニ読みできるとは思わなかった。そして「元禄繚乱」で大河デビューを果たしたふたりは、6年後に再び大河の舞台で共演することになるのだが、それは次回。

【ジャニーズはみだしコラム】

 本編では矢頭右衛門七を演じた歴代ジャニーズに触れたが、他にも赤穂浪士大河にはジャニーズが出演している。「峠の群像」ではヨッちゃんの他に、ニッキこと錦織一清が吉良家の重臣・清水一学役として出演。その17年後に「元禄繚乱」でヒガシが浅野内匠頭を演じたわけで、じゃあ少年隊のもうひとりは? 実は大河ではないが、1988年の年末ドラマ「忠臣蔵 いのちの刻」(TBS)で、カッちゃんこと植草克秀が大石内蔵助の長男・主税(ちから)を演じている。はからずも少年隊3人で、討ち入る側・討ち入られる側・原因を作った側の3方をコンプリートしているのだ。
 なお、「峠の群像」では、吉良刃傷の際に現場に居合わせた若き伊予吉田藩主・伊達村豊役でヤッくんことシブがき隊(当時)の薬丸裕英が出演している。ヤッくんにとってこれが初時代劇だった。

大矢博子
書評家。著書に「読み出したら止まらない!女子ミステリーマストリード100」など。小学生でフォーリーブスにハマったのを機に、ジャニーズを見つめ続けて40年。現在は嵐のニノ担。

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