梅雨明け
長い長い梅雨が明けた。
ベランダの野菜たちが日光を浴びることができない日々が続いて心配していたけれど、どうにか乗り切ってくれた。
そして気づいたら、もう8月になっていた。夏だ。
梅雨も明けたことだし出かけようか、とこれまで通りにはならないのが、今年の夏だ。
晴れても出かけるのを控えなければならない。夏休みでもできる限り、家で過ごさなくてはならない。外へ出ても夏の空気を思いっきり吸えない……。それを考えるだけで気が滅入る。
カレンダーはめくっているけれど、季節がすすんでいることに実感が湧かない。これって、とても悲しいことだ。四季折々の植物に触れて、食を味わって、行事に参加して、みんなでその季節を楽しむ。こんなシンプルなことが難しくなってきている。
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- あいたいな
- 価格:1,430円(税込)
会いたい人には、ちゃんと会う。こんな当たり前のことすらも、できなくなってきている。
緊急事態宣言前と後では、「会う」の持つ意味も大きく変わってきた気がする。
緊急事態宣言中では、オンラインで会うことへシフトしてみたけれど、顔を見ても、話しても、やっぱり、「会った」とは言いづらいなと思った。
直接、顔を合わせて、話したい。人と接したい。
これまでよりもはっきりと思うようになってきたからこそ、この『あいたいな』というタイトルも、強く強く響いてきたのかもしれない。
これは、まさに緊急事態宣言が発令された状況の中で作られた絵本。阿部結さんが、不安とさみしさを抱えて、家で一人過ごしていたある日、姪っ子さんからの手紙にふと目がとまり、「あのこは今何をしているかなぁ……」と思いを巡らせているうちに、気づいたら、気持ちがあたたかくなっていたのだそう。そこから姪っ子さんに向けて書かれた一冊だ。
作品では、女の子が雨の日、遊びに行けないで家にいるという設定。
「みんな なにしているかしら いまごろ なにしているかしら」
一緒に遊ぶはずだった友だちのみんなの想像をするのだ。
あやちゃんはおままごとをしているのかも。れいちゃんは絵本を読んでいるのかも。まーちゃんは指をくわえて寝ているのかも。けんちゃんはいたずらして、ママを困らせているかも……。
「はやく みんなに あいたいな」
雨降る窓の外をながめて想像を膨らませているうちに、「いいこと」を思いつき、あるものを作って女の子は願うのだ。
「あしたは きっと はれますように」
会いたい誰かに簡単に会うことができない状況だけど、会いたい人は今何をしているだろうとたのしい想像をするだけで、心が和む。そして会えた時には、何をしていたか聞いてみよう。
両親は猫たちと仲良くなったようだし、姉は料理が上達していて、弟はリモートワークになって娘とたくさん時間を過ごせたと言う。
あぁ、良かった。
それを聞いただけで、うれしい。会いたい人が会えない間に、少しでも前向きになれていたら、うれしい。
わたしも気が滅入っている場合じゃない。
窓の外を見れば、ほら、空は晴れているのだ。