『猫ノ眼時計』
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猫ノ眼時計 [著]津原泰水
[レビュアー] 若林踏(書評家)
“おれ”こと猿渡と、怪奇小説家の「伯爵」は、豆腐が好物という共通項で結ばれた仲。彼ら二人が行く先々では、常に不可思議な現象が起きてしまう。発火を引き起こす女、悪魔崇拝者達の集団が潜むと囁かれる島、人の運命を告げる猫。猿渡と「伯爵」が出会う出来事は果たして夢か、まことか。
『蘆屋家の崩壊』『ピカルディの薔薇』に続く、〈幽明志怪〉シリーズ第三弾。怪異を合理的に解き明かすミステリであり、妖艶な幻想小説であり、思わず声を上げて笑ってしまうユーモア小説でありと、三つの要素が絶妙なバランスでブレンドされている。「文体の魔術師」と呼ばれる著者の到達点、ここにあり。