『インドの社会と名誉殺人』

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『インドの社会と名誉殺人』

[レビュアー] 産経新聞社

 2007年、インド北部で駆け落ち結婚した若い夫婦が、警察への保護要請にもかかわらず、妻の兄らに惨殺された。共同体の承認のもとに行われた「名誉殺人」だ。夫の母は、村八分やさまざまな脅しに屈せず事件を訴えた。女性裁判官によってインドの名誉殺人で初めて被告に有罪判決が下され、一時は死刑判決も出たが、高裁で減刑され、今も最高裁で係争中だ。

 女性ジャーナリストの取材を通じて、世界で年間5000人の女性が犠牲になっているという名誉殺人の悲劇とともに、伝統的な村落共同体と民主的制度がせめぎ合うインド社会の断面が浮かび上がる。(チャンダー・スータ・ドグラ著、鳥居千代香訳/柘植書房新社・2500円+税)

産経新聞
2015年11月1日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

産経新聞社

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