オトコに恋するオトコたち [著]竜超

レビュー

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オトコに恋するオトコたち [著]竜超

[レビュアー] 石井千湖(書評家)

 テレビでオネエが活躍しているのはなぜか。男性に恋する男性をゲイやホモと呼んでいいのか。新宿二丁目はどんな街なのか。日本初の同性愛専門誌『薔薇族』の二代目編集長が、知られざるセクマイ(セクシュアル・マイノリティ)の世界を案内してくれる本だ。

 著者自身も同性愛者だが、実体験だけに拠らず、マツコ・デラックスとはるな愛の違い、ゲイバーでの遊び方、渋谷区で可決された同性パートナー条例の問題点など、第三者にも伝わりやすい具体例をもとに語っている。特にセクマイをテーマにしたマンガの話に引きこまれた。

 例えば「GはBLを読むの?」と題した章。“G”はゲイ、“BL”はボーイズラブの略称だ。著者はここで男同士のラブストーリーを好む“腐女子”について考察している。よしながふみがゲイカップルの日常を描いた『きのう何食べた?』は〈ノンケ女性作家とは思えないほどリアル〉と評価するが、理解者のふりして身勝手なファンタジーをセクマイに押しつける腐女子には厳しい。

 かつて『薔薇族』で連載していたが姿を消した劇画家、ヤマジュンこと山川純一の正体を推理した章も必読だ。ヤマジュンのマンガは、ネット掲示板に画像が転載されたことによって有名になった。ツナギを着て〈やらないか〉と誘ってくる顔の長い男の絵を見たことがある人も多いだろう。なぜ同性愛者向けの作品がノンケに大ウケしたのか分析したくだりを読むと、自分のなかにもある偏見に気づかされる。

 著者は偏見を持つノンケを一方的に糾弾しているわけではない。当のセクマイにも仲間うちの慣習にすぎないことをさも定番のように吹聴する人はいるし、別のセクマイを差別することもあると明かしている。人間はお互いに歩み寄らなければ共存できないという前提で、相手のことをちゃんと知ろうよと軽やかな言葉で提案しているのだ。

新潮社 週刊新潮
2015年12月10日号 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

新潮社

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