『クラウドクラスターを愛する方法』
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クラウドクラスターを愛する方法 [著]窪美澄
[レビュアー] 瀧井朝世(ライター)
紗登子の母親は、十二歳の時に家を出ていった。十四年後、再会した母は年下の男と一緒に暮らしていた。それから三年。三十歳目前となった今も「母に捨てられた」という紗登子のわだかまりは拭えず、二人の関係はぎくしゃくしたままだ。肉親を許せない彼女は自分をも許せず、この先自分は結婚して母親となれるだろうか、と不安を抱いている。
ややこしくなった母娘関係を穏やかな筆致で描き、親子やその愛情のあり方に正解はない、と優しく諭してくれる作品。クラウドクラスターは積乱雲の塊のこと。小説内で何を意味するのかが分かった時、そこに“愛する方法”とつけた題名がいじらしくなる。