『愛人バンクとその時代』
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愛人バンクとその時代 [著]伊藤裕作
[レビュアー] 碓井広義(メディア文化評論家)
著者は40年のキャリアを持つ風俗記者。年に百人の風俗嬢を取材してきた大御所である。
本書の中心は、昭和58年に大ブームとなった愛人バンク「夕ぐれ族」だ。組織のオーナーで広告塔は筒見待子。後に売春斡旋容疑で逮捕される。ちなみに「愛人バンク」のネーミングを伝授したのは著者だ。体験取材の形で何人かのシロウト女性と出会い、交際の一部始終を報告していく。
バブル景気へと向かう、浮き足立った空気を背景に、愛人獲得の淡い夢を追った男たち。一方どのような若い女性たちが、何を求めて自らに値札を付けたのか。戦後ニッポンの性文化史、欲望史に咲いた“あだ花”の実相が見えてくる。