全世界8000万部(!) 大ベストセラーの続編

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ミレニアム 4 上

『ミレニアム 4 上』

著者
ダヴィド・ラーゲルクランツ [著]/ヘレンハルメ 美穂 [訳]/羽根 由 [訳]
出版社
早川書房
ジャンル
文学/外国文学小説
ISBN
9784152095848
発売日
2015/12/18
価格
1,650円(税込)

書籍情報:JPO出版情報登録センター
※書籍情報の無断転載を禁じます

全世界8000万部(!)大ベストセラーの続編

[レビュアー] 香山二三郎(コラムニスト)

 全世界で八〇〇〇万部を突破、スウェーデンミステリーの人気を一躍高めた『ミレニアム』。だが著者のスティーグ・ラーソンは刊行前に急死、既刊の三部作で打ち止めかと思いきや、版元と遺族は新たな書き手を見つけて新作を出した。タイトルは同じでも書き手が違うんじゃな、とファンは期待半分、不安半分といったところであろうが、結論からいうと、解説者・杉江松恋の惹句に偽りなしで「抜群におもしろい」。

 三部作の持ち味を生かし、主人公ミカエル・ブルムクヴィストとリスベット・サランデルを新たな事件に立ち向かわせることに成功している。

 前三作の事件から何年かたち、雑誌『ミレニアム』は再び苦境に立たされていた。経営者兼記者のミカエルも時代遅れの烙印を押され、不調のどん底。そんなとき、人工知能の世界的権威フランス・バルデルの開発した技術がハッキングされたというネタが飛び込む。しかもバルデルはその調査を天才ハッカーのリスベットに依頼していたらしい。

 バルデルは仕事に追われ、家庭を捨て渡米したことを後悔、帰国して前妻から息子アウグストを引き取っていた。アウグストはサヴァン症候群だったが、数学と芸術に天才の一端を示していた。だがその頃、アメリカのNSA(国家安全保障局)は産業スパイを行う犯罪組織の関連会社にいたバルデルが離反したことから、彼の身に危険が迫っているとの情報をつかんでいた。やがてバルデルの家を刺客が襲撃するが……。

 前半は先端技術の争奪戦のような展開だが、それだけじゃない。何故そこにリスベットが絡むのかという謎が明かされるにつれ、彼女個人の戦いもクローズアップされていく。アウグストをめぐる中盤のアクションから一気呵成に読まされること必至。原著者ラーソンの遺稿を元に今後別バージョンの続篇が出る可能性もあり、それはそれで楽しみだといったら節操ないか。

新潮社 週刊新潮
2015年1月14日号 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

新潮社

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