【児童書】『世界でいちばん貧しい大統領からきみへ』くさばよしみ編

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【児童書】 『世界でいちばん貧しい大統領からきみへ』くさばよしみ編

[レビュアー] 篠原知存(ライター)

■貧乏とは欲しがること

 ウルグアイの前大統領だったホセ・ムヒカ氏は、2012年にブラジルで開かれた「国連持続可能な開発会議(リオ+20)」で行ったスピーチで日本でも知られるようになった。

 「私たちは発展するために生まれてきたわけじゃない」。スピーチは、消費社会にクギを刺し、幸福の意味を問い直そうと呼びかける印象的な内容だった。本書は、大統領の任期を終えたムヒカ氏を訪ね、人生を振り返ってもらい、どんな思いで語りかけたのかを聞き、日本の子供や若者たちに向けたメッセージのスタイルでまとめたもの。

 投獄生活の話、清貧な暮らしぶりについて、自由や多様性の大切さ、政治のあるべき姿…すてきな言葉がたくさん記されている。

 〈花も草木もいろいろあるから美しい。バラエティのないのっぺらぼうな世界など、ぞっとする〉

 〈貧乏とは、無限に多くを必要とし、もっと欲しがること。ほんとうに貧しい人とは、社会とつながらずに生きている人なんだ〉

 子供と一緒に、ぜひ。(汐文社・1200円+税)

産経新聞
2016年1月10日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

産経新聞社

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