明文堂書店石川松任店「静かでリアルな恐怖が読者の胸を抉る」【書店員レビュー】

レビュー

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冬の旅

『冬の旅』

著者
立原 正秋 [著]
出版社
新潮社
ジャンル
文学/日本文学、小説・物語
ISBN
9784101095028
発売日
1987/01/01
価格
1,034円(税込)

書籍情報:JPO出版情報登録センター
※書籍情報の無断転載を禁じます

明文堂書店石川松任店「静かでリアルな恐怖が読者の胸を抉る」【書店員レビュー】

[レビュアー] 明文堂書店石川松任店(書店員)

二〇〇八年六月八日、刑期を終えた男が滋賀刑務所から出所する。同性愛疑惑による失職、消えた妻、路上生活・・・・・・。とても怖く、残酷な小説だ。彼の不幸な人生を他人事とは思えないのは、彼が見舞われるほとんどのことは、運のすべてが悪い方向に向けば誰にでも起こりえることだからだ。
読んでいて決して楽しい気分になれる小説ではない。しかし読むのをやめたい、とは思わない。静かだが、緊張や緊迫が続く文章に引き付けられてしまうからだろう。気軽に読めるタイプの作品ではない。しかし絶望的な運命を背負った男の旅に、最後まで付き合って欲しいと切に願う。

トーハン e-hon
2015年12月30日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

トーハン

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