『冬の旅』
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明文堂書店石川松任店「静かでリアルな恐怖が読者の胸を抉る」【書店員レビュー】
[レビュアー] 明文堂書店石川松任店(書店員)
二〇〇八年六月八日、刑期を終えた男が滋賀刑務所から出所する。同性愛疑惑による失職、消えた妻、路上生活・・・・・・。とても怖く、残酷な小説だ。彼の不幸な人生を他人事とは思えないのは、彼が見舞われるほとんどのことは、運のすべてが悪い方向に向けば誰にでも起こりえることだからだ。
読んでいて決して楽しい気分になれる小説ではない。しかし読むのをやめたい、とは思わない。静かだが、緊張や緊迫が続く文章に引き付けられてしまうからだろう。気軽に読めるタイプの作品ではない。しかし絶望的な運命を背負った男の旅に、最後まで付き合って欲しいと切に願う。