「10年後破綻する人」はどんな人か 経済ジャーナリスト・荻原博子さんに聞く

インタビュー

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10年後破綻する人、幸福な人

『10年後破綻する人、幸福な人』

著者
荻原 博子 [著]
出版社
新潮社
ジャンル
社会科学/経済・財政・統計
ISBN
9784106106521
発売日
2016/01/18
価格
821円(税込)

書籍情報:版元ドットコム

「10年後破綻する人」はどんな人か 経済ジャーナリスト・荻原博子さんに聞く

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経済ジャーナリストの荻原博子さん

 昨年、「老後破産」「下流老人」といった言葉が流行語になった背景には、多くの人が、この先の生活について不安を抱えていることがあるのは間違いない。

 一体どうすれば、最悪の事態を避けることができるのか。

 この度、『10年後破綻する人、幸福な人』を上梓した経済ジャーナリストの荻原博子さんに聞いてみた。

――なぜ「10年後破綻」をテーマにしたのでしょうか。

荻原:あまり先の話になると、読むことは難しいのですが、10年後くらいまでの流れは大体わかっています。ところが、それに備えようという意識が薄い人が結構いるように思います。

 具体的には、2020年の東京五輪「後」に来る不況にどう備えておくか、ということですね。

――東京五輪で景気は良くなるのでは? 不況になるのですか?

荻原:五輪開催までは、多少の上下はあってもそれなりに景気は上向きになると思います。すでに土地も仕事も人も東京に集中し、バブルのような状況も起こっています。

 しかし、五輪後にはその反動が一気に来るでしょう。

 1984年以降のオリンピック開催地を見てみればわかります。開催国の多くは、その後不況に見舞われています。

 唯一の例外は、1996年のアトランタ(米国)だと言ってもいいくらいです。

 なぜアトランタは例外になったかといえば、当時、米国ではIT革命が起こって、その勢いが強いために、反動の落ち込みをカバーできたから。残念ながら、日本にはそうした次世代産業が育っているとは言い難い状況です。

――しかし、年明け以降株価は急落したとはいえ、3年前に比べれば高い水準にあります。株価はもっと上がると見ている人もいるようですが……。

荻原:日本の株式相場は、このところ明らかに政府系の資金が主導し、7割を占める海外投資家が相場を盛り上げるという形で進んできました。外国人投資家にとっては、これほど安全な市場はないでしょう。なぜなら、相場が下落しても政府系の資金が大量に買い支えにまわるので、マーケットが奈落の底に落ちる心配がないからです。

 しかし、問題はいったんマーケットに入った年金などの政府系のお金は、儲かったからといって簡単にマーケットから引き出すわけにはいかない、ということです。そんなことをすれば、株価は暴落する可能性がありますから。

 こういう相場で、最後に損をするのは、一番最後まで残っているもの、つまり私たちの税金や年金、預金を使った政府の投資ということになります。

――個人のレベルで、何をすれば生活を防衛できるのでしょうか。財産を「土地」「投資」「現金」といった具合に分割せよ、といったアドバイスはよく耳にします。

荻原:土地で値上がりが見込めるのは、都心の不動産ですが、すでに良い場所はかなり高値になっているので、普通の人には手が届きません。

 株などの投資も、資金に余裕がある方ならば、少しやっておくことは悪くないでしょう。ただ、あくまでも余裕資金があれば勉強のつもりでやる、というくらいのほうがいいのではないでしょうか。
 
――「ハイパーインフレ」が到来するから備えよ!という人もいますが……。

荻原:インフレの危機を煽るような意見を聞くと、対策をせねばと不安に駆られるのは当然です。しかし、インフレは一朝一夕には起きません。朝、目が覚めたら、物価がとんでもないことになっていた……なんてことはありません。

 対策はインフレの兆しが見えてからでも間に合います。

 しかも、今はまだデフレからすら脱却できていないのです。

 ちなみに以前、私は1997年に経済破綻した韓国を取材したことがあります。その時、もっとも生活に打撃を受けたのは、住宅や株を持っていた「持てる人」たちでした。

 逆に、最も儲けたのは現金を預金していた人たちです。金利が上昇して、定期預金金利がいきなり31%にまで上がったからです。

 そのお金を元手に、暴落した株や土地を安値で買った人は、さらに大儲けしました。

――では、何をすればいいのでしょうか。

荻原:デフレが続くにせよインフレが来るにせよ、今、しておくべきは「借金を減らす」ということです。

 安心な老後を迎えるためには、投資信託などをコツコツ買い続けるよりも、借金を減らし、現金でコツコツ貯めておくことが、地味なようでも一番効果的です。

 老後に不安を持つ人に向けた「変額個人年金保険」などさまざまな金融商品もありますが、個人的にはあまりお勧めしません。少なくとも、利回りに目を奪われるだけではなく、手数料にもきちんと注意はしてください。

 たとえ運用で多少のプラスがあっても、手数料を取られて結局マイナスに、なんてこともあります。それでは元も子もありません。

 今回、この本は、あくまでも普通の生活、資産を守りたいという人に向けて、経済の基礎知識も含めて書きました。乱高下する相場で一攫千金、ということを狙いたいのなら話は別でしょうが、普通の人はそういうことに手を染めない方がいいと思いますよ。それこそ、欲をかいて「10年後破綻する人」になる可能性が高いと思います。

Book Bang編集部

Book Bang編集部
2016年1月21日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

新潮社

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