ネットに残る亡き人の声 103の墓標を調査すると

レビュー

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ネットに残る亡き人の声 103の墓標を調査すると

[レビュアー] 東えりか(書評家・HONZ副代表)

 インターネットが普及してから、もうずいぶん経った。もちろんその間も人は亡くなっている。作者の死によって永久にネットに漂うことになったブログやホームページは膨大にあるだろう。

 著者は五年前、漠然と人の死生に関心を抱くようになり、亡くなった人のサイトを見つけてカテゴリ分けし、リストアップし始めたという。その中で印象的だった一〇三件が本書にまとめられている。

 カテゴリは突然停止したサイトや自殺願望を綴ったサイトなど六つ。有名人だけでなく、一般の人のものも含まれている。

 胸を打つのは不慮の事故や殺人などで突然命を奪われてしまった場合である。意気揚々と世界旅行に向かった青年が、強盗にあって殺されてしまったり、大震災で津波警報を放送しつづけた町職員本人が津波に呑まれてしまったり……。直前までの普通の生活が楽しそうであればあるほど、彼らの運命を呪いたくなる。

 読んでいて辛いのは闘病記である。若くしてガンや脳腫瘍などを患い、一縷の希望に縋って日々の治療に励む姿は、行く末が見えているだけに切ない。このカテゴリからは『31歳ガン漂流』や『はっちゃん、またね』など本になったものも目に付く。同じ病気を患う人にとっては、参考になり支えにもなっているのだろう。

 本書の中でたびたび語られるのが、残されたブログのコメント欄を利用したスパムや荒らしなど悪意を持ってなされる行為である。なんらかの理由で注目されたブログだと、そこには野次馬のように人が集まってくる。ネットの匿名性にかくれて攻撃する情けない輩は後を絶たない。

 最終章の、遺族が故人の遺志をついで継続しているサイトはとても重要だと感じた。その人を偲ぶためだけではなく、社会的な資料として必要とされるものも多いのだ。生きてきた証を残したい。その気持ちは痛いほどわかる。

新潮社 週刊新潮
2016年1月28日号 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

新潮社

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