[本の森 SF・ファンタジー]『うそつき、うそつき』清水杜氏彦/『世にも奇妙な君物語』朝井リョウ

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うそつき、うそつき

『うそつき、うそつき』

著者
清水 杜氏彦 [著]/東 直己 [解説]/北上 次郎 [解説]/鴻巣 友季子 [解説]/清水 直樹 [解説]
出版社
早川書房
ジャンル
文学/日本文学、小説・物語
ISBN
9784152095763
発売日
2015/11/20
価格
1,836円(税込)

書籍情報:版元ドットコム

世にも奇妙な君物語

『世にも奇妙な君物語』

著者
朝井 リョウ [著]
出版社
講談社
ジャンル
文学/日本文学、小説・物語
ISBN
9784062198240
発売日
2015/11/19
価格
1,512円(税込)

書籍情報:版元ドットコム

『うそつき、うそつき』清水杜氏彦/『世にも奇妙な君物語』朝井リョウ

[レビュアー] 石井千湖(書評家)

 もしも国家がどんな嘘でもバレてしまう制度を作ったら? 第5回アガサ・クリスティー賞を受賞した清水杜氏彦の『うそつき、うそつき』(早川書房)は、首輪型嘘発見器の着用が義務化された世界を舞台に、非合法の除去を生業にする少年フラノの青春を描くディストピア小説だ。

 作中で国民が着けなければいけない首輪は、嘘をつくと赤いランプが光る。親に虐待された少女、不倫をした人妻、患者を見下す医師……年齡も職業もさまざまな人がフラノに仕事を依頼する。〈自分の首輪除去の技術を、首輪の弊害に苦しむ人々のために使いたい〉と思っていた少年は、正義感が悲しい結果をもたらす場合もあることを知り、苦悩を深めていく。

 まず、首輪の取り外しの手順がよく考えられている。例えば作業中に被除去者の精神状態が不安定になって赤いランプが点ると首輪の破壊が探知されてしまう。だから依頼人の男がパニックを起こしたとき、フラノは〈いままでの自分の人生を声に出して振り返って〉と指示するのだ。突然自分の人生を語れと言われた男の反応に説得力がある。失敗した事例の描き方も残酷で容赦がない。なぜ依頼人たちは死ぬ可能性があるにもかかわらず、首輪を外そうとするのか。小説という大きな嘘のなかで、嘘なしでは生きられない人間の謎を追求しているところがいい。

『世にも奇妙な君物語』(講談社)は、テレビドラマ「世にも奇妙な物語」の大ファンである朝井リョウが、映像化を夢見て書き下ろしたという短編集。過去にトラウマを抱えたライターが一見順調な共同生活を送る男女の秘密を探る「シェアハウさない」など五編を収める。著者の作品を“リアル”という言葉で評価したことがあるけれど、本書を読んだあと“リアル”って何なのと自分を問い詰めたくなった。実在のモデルが容易に特定できる人物や身近な社会現象がふんだんに盛り込まれているのに、気がつくと不思議で恐ろしい世界に迷い込んでいるのだ。

 なかでも「リア充裁判」にはゾッとした。「コミュニケーション能力促進法」という法律が施行されたパラレルワールドの日本で、友達のいない女子大生がリア充度をはかる調査会に招集される。リア充裁判は、人間関係の深さよりも、SNSを使い、どれだけ人とのつながりをアピールできるかに価値を置く。孤独だが誠実に人と向きあおうとする主人公に感情移入してしまうが、どこか違和感もおぼえる。コミュ障を自称しながら他人からの歩み寄りを期待している人は、結末に衝撃を受けるはず。最終話の「脇役バトルロワイアル」を読むと、他の四編の解釈が変わる構成も見事だ。全体の仕掛けも含めて映像化するのは難しいだろう。だからこそ映像で見てみたい。

新潮社 小説新潮
2016年1月号 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

新潮社

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