脳が未完成な10代を正しく導くには

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10代の脳 反抗期と思春期の子どもにどう対処するか

『10代の脳 反抗期と思春期の子どもにどう対処するか』

著者
フランシス・ジェンセン [著]/野中 香方子 [訳]/エイミー・エリス・ナット [著]
出版社
文藝春秋
ジャンル
文学/外国文学、その他
ISBN
9784163903828
発売日
2015/12/10
価格
1,836円(税込)

書籍情報:版元ドットコム

脳が未完成な10代を正しく導くには

[レビュアー] 鈴木裕也(ライター)

 突然大声で叫んだかと思えば、くだらないことに真剣に熱中している。奇抜なファッションや髪型を選びたがり、校則や法律で禁止されている行為へのブレーキが利かない……。そんな思春期、反抗期を迎えるティーンたちの行動に対して、大人はなぜ「理解できない」と言うのか。そう言う誰もが同じ一〇代を過去に経験してきているのに。

 この謎に対して、これまでは「最近の若い者ときたら!」で済ませてきた。しかし、脳の発達を専門とする著者の答えは違う。「ティーンの脳と大人の脳は配線が違うのだから、理解できるわけがない」となる。特に異なるのが「判断・知性」を担い、脳の容積の四〇%を占める前頭葉で、ティーンの前頭葉の完成度は八〇%程度だというのだ。かつては定説だった「一〇代で脳は完成する」は、最新の脳科学によれば正しくなかったのだ。前頭葉をフルに稼動させているのが当たり前になってしまった大人には、前頭葉を使わずに判断していた一〇代の頃の理屈はもう思い出せないということだ。

 子供が危険な行動を好む理由もそう考えれば説明がつく。理性を司り、衝動にブレーキをかける前頭葉が未発達なら、行動にブレーキがかからないのは当然。その結果として、一〇代の脳は常に危険に晒されていると著者は力説する。飲酒、喫煙、ドラッグ……これら、ブレーキがかかりにくいために手を出してしまいがちな「誘惑」は成長過程の脳には刺激が強すぎ、脳の正常な発達を阻害するという。自らも二人の男児を育て上げたジェンセン博士は、未完の前頭葉を持つ彼らにブレーキをかけるのは年長者の役割だと説く。本書の中盤以降には、それぞれの誘惑に対する具体的な対策が丁寧に書かれているので、思春期の子育てで悩んでいる親には大いに参考になるだろう。

 脳科学というよりは一〇代の心理についてわかりやすく書かれた本なので、「脳」だからと敬遠しないで、気軽に読んでもらいたい。

新潮社 新潮45
2016年2月号 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

新潮社

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