【児童書】『だっこ だっこ』マリカ・ドレ作、青山花訳
[レビュアー] 村島有紀
■する側にも穏やかな時間
「ママ、だっこして!」。この言葉を何度聞き「重いなあ」と、ため息をつきながら抱き上げたことだろう。
「だっこ だっこ」が繰り返される赤ちゃん向き絵本。お母さんと離れてひとりでお出掛けした子ウサギが、クマやキツネなどいろいろな大人の動物にだっこされる。バイバイの前も転んだ後も…。迎えに来てくれたのはお父さんかな?
パリ在住の作家による太い黒の曲線を使ったシンプルな絵柄。千代紙を貼り付けた服のデザインが斬新だ。背景が真っ白なのはお出掛け先の景色を、読者の想像に委ねるため。動物たちのユーモラスな表情を眺めているだけで自然と笑顔になる。
子供が大きくなり抱っこをせがまれることがなくなった今、「だっこ」は優しさと幸せをもたらす魔法の言葉だったと気付く。うれしいときも悲しいときも大抵の子供は「だっこ」されれば満足だ。そして、する側にも穏やかで甘やかな時間が訪れたのだった。改めて、ありがとう-。(クレヨンハウス・1400円+税)
村島有紀