『天野可淡 復活譚』
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【写真集】『天野可淡 復活譚』片岡佐吉 妖しい魅力を強調
[レビュアー] 磨井慎吾
■妖しい魅力を強調
数ある人形の中でも、際立って妖しい魅力で熱狂的な愛好者を持つ球体関節人形。その伝説的な作り手として知られる天野可淡(かたん)さんの作品を撮り下ろした写真集だ。
天野さんは昭和28年に生まれ、女子美術大在学中から人形制作を開始。少女の可憐(かれん)さ、妖艶(ようえん)さとともに独特の暗さや怖さも感じさせる作風で高い評価を得るが、平成2年に37歳の若さで亡くなった。
本書は天野作品コレクターの写真家、片岡佐吉さんが撮り続けてきた写真をまとめたもの。室内だけでなく海岸や庭など屋外でも撮影し、全体に暗い色調の背景から、妖しい美しさの人形が浮かび上がる。
撮影に際し、片岡さんが最も苦心したのは目の表現だ。天野さんは制作時、まず人形の性格を詳しく設定し、それに合わせて油絵の具で眼球の虹彩を精緻に描き、その上からガラスをかぶせる手の込んだ技法を駆使していたという。「天野作品のすごさは目に集約されています。だから昼でもライティングを行い、目を強調しました」(磨井慎吾)(KADOKAWA・2800円+税)