ブックセンターササエ(佐々栄文盛堂)「とぼけているけれど深く沁みる表現」【書店員レビュー】

レビュー

  • シェア
  • ポスト
  • ブックマーク

ブックセンターササエ(佐々栄文盛堂)「とぼけているけれど深く沁みる表現」【書店員レビュー】

[レビュアー] ブックセンターササエ(佐々栄文盛堂)(書店員)

例えば、深刻で残酷なこのうえなく「重い」経験。目をそむけたい事や避けて通りたくなるような難事。そういった経験の中に、本当に大切な事や幸福とは何ぞやという人生の真理が見い出せたりする。でもそれを一つの「表現」として面白く、かつ本質を損なわず他者に伝えるのは難しい。重すぎると受け手が引いてしまう、軽すぎると単なる「おふざけ」になってつまらない。このエッセイ+コミックが凄いのはそれらを「とぼけた」味わいで表現してみせるという事。重くも軽くもない。とぼけた味わい。でもとても深く、とても沁みる表現。水木先生が出会った忘れられない人々とドラマチックすぎる人生。それらを踏まえて語られる水木的幸福論。さらりと読めますが実に深い余韻が残る一冊です。

トーハン e-hon
2016年2月14日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

トーハン

  • シェア
  • ポスト
  • ブックマーク