【児童書】『おじいちゃんのゆめのしま』ベンジー・デイヴィス作、小川仁央訳 あたたかい別離の物語
[レビュアー] 産経新聞社
ある日、おじいちゃんの家を訪ねたシド。「見せたいものがあるんだよ」と言われて、初めて屋根裏部屋に登ってみたら、そこには大きなドアが。「先にお行き」とうながされ…。
〈シドは とってを まわして、ガチャッ、おもい ドアを おしあけた〉
そこはなんと船の上。〈ボオオオオオオオオッ!〉おじいちゃんがハンドルを引いて、汽笛を鳴らす。〈しゅっぱつしんこう!〉
水平線のかなたに見つけたのは、ジャングルの島。古い丸太小屋を、2人できれいに住めるようにして、あちこちを探検する。シドは「ずっとここで暮らしたい」とも思ったけれど、いつか帰らなくてはいけないこともわかっていた。すると、おじいちゃんが言う。
〈わたしは、ここに のころうと おもうんだ〉
別離の物語だが、旅、ユートピア、自然と人間、自立…さまざまなモチーフが織り込まれて深みを与えている。デフォルメされた人物やカラフルな動物たちなど、絵柄がポップなこともあって、全体のトーンは明るくあたたかい。(評論社・1400円+税)