『拳の先』角田光代著
[レビュアー] 産経新聞社
出版社の文芸編集部に勤める空也は、かつてボクシング雑誌で記事を書いていた。しばらく縁遠くなっていたが、ふとしたことからボクシングの世界に再接近することに。担当することになった作家に振り回されつつ、以前に通っていたジムの花形選手、タイガー立花が重ねる練習と試合の日々を見続ける。同じ階級にデビューしてきた怪物のような新人と対戦することになった立花は…。一方、ジムに通う小学生ノンちゃんは、どうやら友達にいじめられている。助けたいと思う空也だが…。リングと、その周囲で繰り広げられる人生の戦いを臨場感抜群に描く。(文芸春秋・2200円+税)