『外道クライマー』宮城公博著
[レビュアー] 産経新聞社
那智の滝を登って逮捕、といわれて4年前を思い出す人はどれほどいるだろう。著者はそれで職を失った。以降、開き直って過酷すぎる山行を繰り返す。その壮絶な記録が本書。タイのジャングル、日本の秘境、台湾の峡谷へ。大自然を前に、無力を自覚することから挑戦は始まる。〈脂肪とタンパク質に二ミリぐらいのポリエチレンをまとった単なるホモサピエンスである私たち〉。死にギリギリまで近づいて実感する生。情けなさも格好悪さもさらけ出し、ユーモアを手放さない書き口がいい。読むうちに「外道」が「王道」と読めてくる。(集英社インターナショナル・1600円+税)