【児童書】『ぼくのなかのほんとう』パトリシア・マクラクラン作

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ぼくのなかのほんとう

『ぼくのなかのほんとう』

著者
パトリシア・マクラクラン [著]/たるいしまこ [イラスト]/若林千鶴 [訳]
出版社
リーブル
ISBN
9784947581839
発売日
2016/03/01
価格
1,430円(税込)

書籍情報:openBD

【児童書】『ぼくのなかのほんとう』パトリシア・マクラクラン作

■ていねいに描く「気持ち」

 母さんは、たぶん、ぼくよりもバイオリンが好きなんだろうな-。バイオリニストの母と作曲家でビオラ奏者の父をもつ一人っ子のロバートの心には、いつもそんなあきらめがあった。

 両親は、ロバートが寂しくないよう動物保護施設から犬をもらってくれはしたが、どんなときでもきちんと「ロバート」と呼び、愛称で呼ぶことはない。夏休み、長期の演奏旅行に出る2人は、ロバートを祖母に預ける。一緒に行きたいのに、「ノー」といわれることが怖くて言葉にできないロバート。

 そんなロバートが、ちょっと風変わりな祖母マッディと愛犬のエリー、祖母の友人で獣医師のヘンリーと過ごすなかで“ぼくのなかのほんとう”の気持ちに気づいていく過程を、作者はファンタスティックな情景とともにていねいに描きだす。

 拒絶されるのがこわくて『助けて!』といえない子供や、失うのが怖くて愛せない大人の背中もそっとおしてくれるような、温かい語り口が心に残る。(若林千鶴訳、たるいしまこ絵/リーブル1300円+税)

 服部素子

産経新聞
2016年4月3日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

産経新聞社

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