書籍情報:openBD
文芸評論家・縄田一男が推薦 NHK大河ドラマ「真田丸」に挫折したなら、この3冊
[レビュアー] 縄田一男(文芸評論家)
NHKの大河ドラマを見なくなって久しいが、今年は「真田丸」ということなので何回か付き合うことにした。
だが何のことはない。視聴者より脚本家の方が面白がっている代物なので、はやくも挫折してしまった。唯一、拾いものだったのは、かつて同局で放送された池波正太郎の『真田太平記』(原作は全十二巻、新潮文庫)で真田幸村を演じていた草刈正雄が、真田昌幸を演じており、それなりの年輪を感じさせていたことだった。
というわけで、私は映像より、前述の『真田太平記』等、活字の方に向ってしまうのだが、そんな折、格好の一冊が刊行された。池波正太郎ほかによる『真田太平記読本』である。
池波作品の強みは、独特のリズムを持った文体にあり、『真田太平記』などどの巻から読みはじめても、たちどころにその虜になってしまうのだが、『読本』となるとそうもいかない。
はじめての読者のためにも良く分かるように、第一章「池波正太郎と真田家――エッセイ集」には、何故、作者がこの大河小説を書くに至ったのか、「真田」関連のエッセイが五篇、据えられている。
第二章「『真田太平記』のすべて」では、「『真田太平記』とは」にはじまり、全十二巻あらすじ紹介、人物事典、物語年表、物語地図が収録されており、この一巻を片手に作品を読めば興味も倍増する仕掛けが施されている。
圧巻なのは第三章「もっと楽しむ『真田太平記』」だ。作品担当編集者である重金敦之のロングインタビュー。落合恵子の一味も二味も違った紀行文。池波正太郎記念文庫の指導員を務める鶴松房治による、池波正太郎が『真田太平記』に行き着くまでに書かれた膨大な作品群に対する解説。そして、池波正太郎真田太平記館館長を二度務めた土屋郁子による物語の舞台をめぐる旅行記といったように正しく興味津々たる一巻。
ここで最後に、真田一族を扱った最も旬な作品を挙げるとするなら、昨年二月に急逝した火坂雅志の『真田三代』(文春文庫)だろう。