信じていいのか銀行員 ロクでもないものばかり売ってきた金融機関

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信じていいのか銀行員  マネー運用本当の常識

『信じていいのか銀行員  マネー運用本当の常識』

著者
山崎 元 [著]
出版社
講談社
ジャンル
社会科学/経済・財政・統計
ISBN
9784062883467
発売日
2015/12/17
価格
836円(税込)

書籍情報:JPO出版情報登録センター
※書籍情報の無断転載を禁じます

信じていいのか銀行員 ロクでもないものばかり売ってきた金融機関

[レビュアー] 楠木建(一橋大学教授)

 これだけ長期にわたって金利が低下する中で、「貯蓄から投資(運用)へ」というのはもっともな話だ。しかし、この掛け声がしきりに叫ばれるようになってから久しい。日本の個人家計が投資にシフトしないのはなぜか。日本人に投資や運用のリテラシーがないからではない。金融機関が目先の楽な商売を優先して、欺瞞に満ちたことを繰り返してきたからだ。

 投資(というよりギャンブルとしての投機)が趣味という人は別にして、普通の人にとって個別株を売買するのはリスクが高い。そこで投資信託が資産運用の主要な手段になる。ここまではよい。

 しかし、著者は明快にして単純な論理で批判する。これまで日本の金融機関がせっせと売ってきた投信のほとんどはロクでもないものばかり。まずもって手数料が高すぎる。「毎月分配型ファンド」のような論理的に不可解な商品を(それが手っ取り早く売りやすいというだけの理由で)推す。欺瞞としか言いようがない。

 銀行と銀行員を批判の対象としているが、著者の議論は伝統的な証券会社の手口にもそのまま当てはまる。シニカルでテンポよい文章には独特の味わいがある。

 本書の批判にも揺るがないような金融機関が出てくることを望む。それは普通の人が本当に安心して買える金融商品だけしか扱わない資産運用サービスである。商売として間違いなく成功するはずだ。

新潮社 週刊新潮
2016年4月28日号 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

新潮社

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