『漢和辞典の謎』
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それはまるでボルヘスのような小宇宙
［レビュアー］ 図書新聞
漢和辞典を使う際、総画数で引こうと思ったら、なかなか目的の漢字にたどり着けなかった……。そんなあなたに是非読んでもらいたい一冊だ。辞典というと、そこに記述されている事柄は金科玉条としているかもしれない。しかし複数の辞典にあたってみると、そこには解釈の揺れがある。なかでも「能」の字の解釈の揺れは、作り手の真剣さとは裏腹に、まるでコントのようで笑ってしまう。ほかに「稗稗問題」など興味深い話題が満載で、それはまるでボルヘスの小説を読んだかのような読後感。と同時に国語辞典や英和辞典とは違う、漢和辞典の微妙な立ち位置が分かる。微妙であるが故に、漢和辞典への愛おしさも募る。まずは死蔵されている漢和辞典を引っ張りだして、「小宇宙」へ旅立ってみよう。（３・２０刊、三四二頁・本体八六〇円・光文社新書）
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2016年5月7日号（3254号） 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです
