吉増剛造イヤーの、はじまりはじまり
[レビュアー] 図書新聞
6月から東京国立近代美術館で大規模な企画展「声ノマ 全身詩人、吉増剛造展」がはじまる。それに合わせて何冊もの著書が刊行される吉増剛造の、これがその嚆矢となる一冊。1939年生まれの詩人の、七十七年の軌跡が新書一冊に詰め込まれている。幼少時代の記憶から、読書体験、はじめて書いた詩。高校の時に出会った若林奮、大学時代の岡田隆彦や井上輝夫との交流。そして島尾敏雄、ジョナス・メカスなど、聞けば聞くほどに湧いて出てきそうなジャンルを問わず溢れ出る様々な人々との逸話。疾走し続ける人生そのままに誕生から現在までを300頁で駆け抜ける。ひとつひとつさらに深く知りたい思いと、索引も欲しかったという思いとともに本を閉じた。(4・20刊、三二四頁・本体九〇〇円・講談社現代新書)