『MISSING』
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明文堂書店石川松任店「MISSING」【書店員レビュー】
[レビュアー] 明文堂書店石川松任店(書店員)
「死なせてしまったんだ」自殺に失敗した男が見知らぬ少年に語り出す恋の記憶・・・・・・「眠りの海」、《幽霊ちゃん》。妹の友達は妹からそう呼ばれていた。彼女は自分のことを事故で死んだ妹だと思い込んでいた。彼女の両親への態度に、僕は違和感を覚え・・・・・・「祈灯」、私立図書館に勤める《僕》と有名な大学教授の《彼》。同級生だった二人が過去を回想する内に一人のクラスメートの存在が浮かび上がる。その男子生徒は《彼》以外のクラスメートのほとんどから存在を忘れられていて。本短編集の中で異彩を放つ・・・・・・「彼の棲む場所」
すべての作品に共通しているのはMISSINGです。登場人物たちの多くは何かを失った傷を抱えています。中には眼を背けたくなるほど醜悪な傷(罪)もあります。著者はその傷を悪趣味に抉るわけでも説教臭く糾弾するわけでもなく、しかし安易に赦そうともしません。ただその傷に寄り添おうとします。とても好感の持てる作品(登場人物たちのやりとりに一切思うところがないか、と言うと、それは嘘になりますが・・・・・・)です。
MISSING。表題作を持たないこのタイトルが深々と胸に突き刺さる。これは痛みを知る人のための物語です。